この度の令和6年能登半島地震で犠牲になられた皆さまへ謹んでお悔やみ申し上げます。また、被害に遭われた皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。1日も早く安心して生活が出来る環境となることを心よりお祈りしております。

始まりましたGAL Radio。ここはカフェで友人と会話するように、音楽の魅力についてお話する場所です。今年もよろしくお願いします。

今回は昨年末行われた、TRICERATOPS・和田唱さんのソロライブ「Covers」についてお話します。ステージにはひとり、全曲カバーのみという初の試みとなる貴重な一夜を振り返ります。今回のテーマは「愛」です。

 
 
 

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憧れを音に


WADA SHO SOLO「Covers」
丸の内・COTTON CLUB
2023年12月17日(日)
[1st.show] open 3:00pm / start 4:00pm
[2nd.show] open 5:30pm / start 6:30pm

MEMBER
和田唱(vo,g,p)

 
 
サムネ&画像1
 
 

3ピースバンド、TRICERATOPSのヴォーカル、ギター、そして多くの楽曲を手がけるソングライターの和田唱さん(以下、唱さん)が、COTTON CLUBで1年ぶりにソロライブを開催。クリスマス直前ということもあり、会場周辺の丸の内エリアは煌びやかなイルミネーションを一目みようと集まる人たちで華やいでいました。

2ステージ制の2nd.showを鑑賞するべく、会場入り口に列を作り開場時刻を待ちます。1st.showを観終わったばかりのお客様が会場から出てきます。みなさんの満足気な笑顔やホクホクした表情に一層期待が高まります。

 
 
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TRICERATOPSと言えば、発明的なリフが炸裂する3コードで踊れるロックから、甘く切ない極上のバラードまで、メンバー3人の卓越した高い音楽性に裏付けられた楽曲が特徴的なバンドです。邦楽、洋楽共にカバー曲もライブや音源で積極的に演奏されてきました。そんな唱さんのロックにとどまらずJAZZや映画音楽に至るまで、幅広いルーツを堪能できる一夜限りのスペシャルライブとあって、開演を待つファンの皆さんのワクワクが徐々に増していくのが伝わってきます。僕はステージサイド席に着席。アンプやエフェクターなどの機材もよく見える位置でお食事を頂きながら今か今かと開演を待ちわびます(お食事美味しくてあっという間に始まる)。

客席後方からファンが座るテーブルの間をすり抜け、颯爽とステージへと上がる唱さん。持ち前の明るさと屈託のない笑顔はこの日も全開です。さらりとアコースティックギターを弾き始め、往年のスタンダードナンバーを和田唱アレンジで鳴らしていきます。エレキギター、ピアノと場所と楽器を変えながら弾き語りを披露していく様は軽快に音楽と遊ぶようで、彼の部屋に招かれたような心地よさの中で客席は徐々に熱を帯びスウィングしていきます。

みなさんご存知かと思いますが改めてちゃんとお伝えしますね。唱さん、ギターめちゃくちゃ上手いんです!! そのテクニックとスキル、表現力の高さからは並々ならぬ原曲への愛と魂を感じます。これをひとりでやられるって他にはいらっしゃらないと思います。本当にすごい。

中盤、大好きな「Mr.Sandman」をインストで披露。青く薄暗い照明に照らされながらグレッチのエレキギターで爪弾く時代を超えてきた普遍的に美しい旋律。一音一音が光り輝く魔法のようで、音が場を支配していく感覚。横顔、たまらなくカッコ良かった。。(ステージサイドは今後、横顔堪能席と呼ぼう)

自身初となる“ミュージカルの音楽担当”を務めた、2023年10月の舞台「のだめカンタービレ」からセルフカバーという形でメドレーも初披露。ずっとトライしてみたいと公言されてきたミュージカル音楽という憧れを叶えられたり、幼少期から大人になった今も好きなものへの探究心が衰えるどころか強くなり、今もなおその憧れを追い求めるゆえの音楽への造詣の深さ、愛が根底に流れている説得力を持って響くカバーはまさに愛そのものでした。もちろんどの道も大変なことがあるけれど、好きなことをやり続ける時間には敵わない。その原動力は勝ち負けじゃなく愛だから。そう、唱さんの音楽は愛なんだ。

 
 
 

愛が今を形作る


COTTON CLUBならではな、至近距離だからこそ感じられる音楽というものが存在しました。

この夜だけのコラボドリンク、アーティストカクテルの名は「プロポーズ」。ウォッカ / ラズベリーサングリア / レモンジャム / ダージリンティー / ラズベリーソースというスウィートなお味はまさに彼の音楽にピッタリ。

 
 
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(開演中以外は場内撮影OK)

 
 

勘が鋭い方はこのネーミングだけでグッと来ていたかと思います。そうです、KANさんの「プロポーズ」を披露してくれたんですね。

もう、言葉にならない幸せな寂しさが押し寄せてきて、思わず涙が溢れてしまいました。今まで色んな方のライブで何度か涙を流したことはあったけど、嗚咽が止まらなくなったのは初めてでした。KANさんが憑依するとも違って、KANさんも会場のどこかで一緒に見てくれているような、もっと言えばもう会えない自分にとっての大切な人までも隣にいてくれているような、とても愛おしい気持ちが会場に溢れていました。目の前に愛が現れたんだとさえ思った。絶対にあれは唱さん、KANさん、音楽の魔法だった。あの夜、あの瞬間のあの演奏は間違いなく世界で一番カッコよかったと思う。そういうライブは、人生にそう何度もあることじゃないし、そんな夜を共有できることはとても幸福なこと。それくらい幸せな気持ちにさせてくれる素晴らしい演奏でした。

 
 
TRICERATOPS「プロポーズ」
以前ライブレコーディングされたバンドアレンジバージョンもとても良いのでお聴きください

 
 

しっとりした雰囲気を引き連れながらも最後はハッピーに締めくくる「Can’t Take My Eyes Off You」で本編が終了(原曲には無いマイナーコードをサビに入れてメロディーを変えて歌うアレンジが最&高なんだ!)。満面の笑みで楽しげに歌う姿からは、今も音楽に恋している唱さんの純粋さと真っ直ぐ伸びる信念が全方向に放たれていた。

僕は涙目のままスタンディングオベーション。ステージ横にもご挨拶してくれた唱さんに「感動しました」と一言お伝えしたところ、笑顔で「ありがとう」と返してくれました。

歌、ギター、ピアノという至極シンプルな編成だからこその緊張感と、集中力が音として目の前で表現されている奇跡。愛には色んな形があるけど、きっと「今」のことを言うんだと、頭ではなく心が理解するような感覚にさせてくれる美しい音。原曲への愛のある解釈とアレンジによって、カバー曲の魂が唱さんの演奏を通して僕らに伝えられる名演でした。それは間違いなく彼の音楽愛の仕業。彼が音楽を好きでいてくれて、音楽家になってくれて、今も奏でてくれていて本当に良かったです。

敬愛するミュージシャンが影響を受けた楽曲のカバーを生で聴ける瞬間は、音楽家のルーツや核の更に芯の部分に触れるような極上の体験と言えます。ルーツをじっくり見つめることは、過去から今を知り未来へと繋げていくような尊い行為であり、その先に生み出されるミュージシャン自身の作品への繋がりも感じられるからです。唱さん、新しい作品をレコーディング中とのこと。楽しみですね。

「もう少しだけ、ほんの少しだけ、やさしい気持ちを持って生きていけそうだ」と思いながら通る帰り道の丸の内のネオンはなんだかさっきより煌めいて見えた気がしました。そろそろカフェを出ましょうか。最後までお読み頂きありがとうございました。

 
 
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最後に、今回は披露されませんでしたが、唱さんが藤井フミヤさんへ楽曲提供した「ネオン」のセルフカバーがとても素敵なのでお届けします。

 
 

 
 
 
 
 
 
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オススメしたい!のコーナー


テーマに沿った楽曲を独断と偏見で選ぶコーナー。今回のテーマは「My Best 2023」として、2023年リリースの楽曲から特に心揺さぶられた曲を選曲しました。今年もJ-POPに限らずK-POP、洋楽からもチョイスしました。2024年もそれぞれが素敵な音楽と出会えますように。


01.ETA / NewJeans
02.花 / 藤井風
03.私の瞳は黒い色 / YUKI
04.アート=神の見えざる手 / Mr.Children
05.未来未来 / スピッツ
06.Glue Song / beabadoobee
07.Super Shy / NewJeans
08.Flash Forward / LE SSEERAFIM
09.rose / KID FRESINO
10.Mr.Sonic / QUBIT
▶︎Apple Musicプレイリスト

 
 

●お知らせ
①高橋圭 2nd Album『landmark』絶賛配信中!
▶︎DL & Streaming URL

 

②YouTubeにてlandmark tree 展開中!
ダウンロード、ストリーミングサービスを利用されていない方にも新曲たちを聴いて頂けたらという思いから、YouTubeにて楽曲を公開中です。改めてMIXもし直し、少しずつ育つツリーのようにアルバムCMと共にアップして参ります。
▶︎landrmark tree

 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
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第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
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第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
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第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
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第43回「クリスマスソングの新たな名曲! Yuzukana『POST』ライナーノーツ」
第44回「YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう! デモ音源フル尺完成!!」
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第48回「TRICERATOPS NEW ALBUM『Unite / Divide』レビュー」
第49回「アートディレクター・森本千絵さんとMr.Children」
第50回「YUKI ソロデビュー20周年記念企画第1弾 私が『ビスケット』を好きな理由」
第51回「スタジオデスクをDIY!!」
第52回「妄想! 脳内夏フェス2022!」
第53回 YUKI ソロデビュー20周年特別企画第2弾 「描き続けてきた『歓びの輪』」
第54回「ドラマ『silent』と主題歌 Official髭男dism『Subtitle』が丁寧に紡ぐ音と言葉」
第55回「YUKIソロデビュー20周年記念特別企画第3弾『Oh!ベンガル・ガール』レビュー」
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第58回「YUKI NEW ALBUM『パレードが続くなら』レビュー」
第59回「音楽と共に生きていく」
第60回「Mr.Children 30th Anniversary Tour『半世紀へのエントランス』 ツアーレポート&ディスクレビュー」
第61回「5年ぶりのステージで感じたこと」
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第65回「ゆず Kアリーナ横浜 こけら落とし公演初日ライブレポート」
第66回「Mr.Children NEW ALBUM『miss you』レビュー」
第67回「やさしさの天才、KANさん」