はい、そんな訳で〜始まりましたGAL Radio。ここはラジオを聴くように、友人とカフェで会話するように音楽についてお話していけたらという場所でございます。


皆さんはどんな時に音楽を聴きますか? 悲しい時や落ち込んだ時に気分を変えたり、より悲しみに浸ったり思い切り楽しみたい時など理由は様々ですが全てに共通するのは「心が音を欲している」時だと思います。私の心が求める音のひとつ、今回はBUMP OF CHICKENさんについてお話したいと思います。湧き水を汲み上げるように、毛布を背中にかけてくれるようにその両手が奏でる演奏でそっと包みそのままでいいと肯定してくれつつ、それでも世界に見つかるその時は生き抜いてと前を向かせてくれる楽曲達に今まで何度も支えてもらいました。私にとって彼らは救世主です。そんな彼らの最新アルバムが先月リリースされました。今作が放つ輝き、心に煌めきを映してくれる現象の謎を一緒に観測していきましょう! まずはこの曲からお届けします!

 
 

 
 

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BUMP OF CHICKEN 9th Album『aurora arc』
2019.7.10 Release
http://www.bumpofchicken.com/2019/

 
 
IMG_19681.aurora arc
2.月虹
3.Aurora
4.記念撮影
5.ジャングルジム
6.リボン
7.シリウス
8.アリア
9.話がしたいよ
10.アンサー
11.望遠のマーチ
12.Spica
13.新世界
14.流れ星の正体

 
 

収録曲の殆どが既発曲ですがこれがまたなんとも不思議なアルバムで、彼らがタイアップで求められてきた前作からの3年5ヶ月間の軌跡をなぞるように音という名の星を心に描き、到達点を結んで集めたら星座になり、それを想像し映していた夜空にオーロラが浮かんでいるのをメンバー4人と一緒に眺めている、そんな音。小さい頃しし座流星群を目の当たりにした夜のような作為や思考とはかけ離れた現象が引き起こす瞬間のような感動を思い出す楽曲群です。

 

 

 
●Aurora

今作のキーワード〈オーロラ〉という言葉から以前ボーカル藤原基央さんがTOKYO FMのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』(2008年1月15日放送)のインタビューで話していた内容を思い出しまとめてみました。(以下抜粋、一部意訳)


「優しさについての価値観、定義について昔から疑問を持っていた。メンバーも家族も友達も優しい人はいっぱいいる。誰しもがわざわざ冷たくするよりは優しくありたいと思ってるはず。そうありたいと思って取る行動ってあると思うんですけど、僕が周りの人達を優しいと思う時はそういうところじゃないと思う。本当にその人の気付かないところで優しい奴だなって思う。偶然産まれる現象なんですよ。人為的な人工物じゃない。でも必ず人間が起こしたエフェクトによって産まれることだと思うからそういう意味では人工的かもしれないけど作為的には作れないというか。なんだろうね、オーロラとか見たことねぇけどそういう感じなんじゃないの? きっとわぁってなるでしょ? あれも現象じゃん。あれレベルのことだと思います。もしかしたらそれ以上のね。そのために行われた行為なんてきっと何もないんだけど、蝶々が向こう側で羽ばたいたらこっち側で台風が起こるって話聞いたことあるけど、蝶々だって別に台風起こすわけにやってる訳じゃないでしょ? そんくらいの何かがあったくらいのことだと思うんですきっと。でも出会ってしまうことがあるんですよね」


という興味深い発言をされていました。更に話は続きます。


「みんなさ、ほら誕生日プレゼントとかあげたりするでしょ? 自分が一番嬉しいじゃん、喜んでもらえたらさ、喜んで欲しい訳でしょ? 自分の為じゃん。嬉しい顔が見たいからじゃん、自分が。エゴじゃん。エゴイストな訳じゃん、その発端はさ。この話をするとさ、どうしてエゴなんて言うの? って嫌な顔する人がいるんだけど、エゴなんて超カッケェじゃん! 超素晴らしいじゃん! お前にこれをあげるのは俺のためなんだって凄く信用出来るじゃないですか。下心のある行為が偽善なのであれば世の中偽善者だらけだけどそこは何も偽ってないと思うんだよな。この人は自分の為に俺に向けて何かを発信してくれてるんだっていうことが一番嬉しいです」


この内容は彼らの音楽の根底にある哲学、深くまで突き刺さる理由を知れた気がしましたし、オーロラのような地球上で起きる神秘的な現象と人の優しさ、音楽に何か共通点を感じたりもします。CDのブックレットにはメンバーがカナダのイエローナイフという場所にオーロラを観測しに行く行程が写真に収められていて、4人がオーロラを見上げている一枚、雪原を笑顔で燥ぐように走る1枚は天体観測の頃の写真となんら変わっていないし上記のインタビューで話していたオーロラを4人で観測したことは感慨深いものがあります。


彼らの歌の醍醐味の一つとして最後の1行で心をギュッと掴む力強い言葉が歌われます。「Aurora」の〈あなたの言葉がいつだって あなたを探してきた そうやって見つけてきた〉の一言もそれまでの時間の全てを肯定してくれているようです。

 
 

 
 
 
●まとめ

彼らの音楽のテーマにはずっと孤独や悲しみ、喪失が描かれています。「話がしたいよ」という曲でも〈ねぇ 一体僕らどんな言葉に出会っていたんだろう〉と、君と僕の別の未来を想像する内容が歌われています。言葉は声だったり歌だったり文字だったり、目に見える景色、体で感じる風から感じ取ることもあるし、焼きたてのパンの匂いからだって言葉は生まれる訳で。言葉と出会うとはどんな思いを受け取り渡すのか気持ちを伝えたい大切な君がいたであろう今を想像する表現として最も美しい一つだなと思いました。


ボイジャーは太陽系外に飛び出した今も秒速10何キロだっけ 旅を続けている〉という歌詞も、君がいなくなってから時間と距離が離れてきてしまった今もボイジャーは旅していて自分をそれと重ね「君がここにいない」という残酷にも襲いかかる圧倒的な事実。けれど、それでもそれすら同じ気持ちならいいな。なんてこと歌われたらね…(涙)。


魔法はいつか溶けてしまうし、音は鳴り止むし、出会いは別れに変わり必ず終わりは来ます。彼らが宇宙を歌う本当の理由は分かりませんが、きっと途方に暮れる程遠い宇宙とここにいない君の存在を歌うことがバタフライエフェクトのように遠くの君へ届くかもという思いで彼らは音楽を奏で、宇宙の一部である私たちの心の奥深くにも届くのではないでしょうか。
最後はこの曲でお別れです。あなたにとって話がしたい人は誰ですか? またお話しましょう!

 
 

 
 
 

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「ねぇ、できちゃった」のコーナー


 

新曲をお届けするコーナー! 今回は夏の終わりをイメージしたバラード「波音」です。海をテーマに鼓動や呼吸、人のバイオリズムみたいなものって寄せては返す波の音と似ているなぁというところから作りました。時に凪のように、時に荒々しく。作詞家K Sawadaishi氏とあーでもないこーでもないと言葉の響きから文脈、表現についてのディスカッションを繰り返し難産の末に歌詞が完成しました。ピアノと歌だけとかしっとりしたのをイメージしていたのですがなんせピアノはほとんど弾けないのといつもの手グセでロックバラード方向にアレンジが進んでいきました。初めての試みとしてアレンジ面でストリングスを入れたり、Music Videoの撮影、編集まで行い新しいチャレンジにも試みました。是非お聴き下さい!

 
 
Sound of waves
2019.08.08
Words by K Sawadaishi & K Takahashi
Music & All Instruments,Programming,Music Video Direction by Kei Takahashi
 
 

 
 
波音
 

いつの間にかうたた寝していた 夕暮れが流れ落ちていく
いつか重なる昨日を探して 僕はただ願いを浮かべてる


ソーダ水の泡と体の火照りは 想いだけ 残して無くなるの
風が季節を教える頃に


遠くで揺らめく理想 波音 消えかけた時 魔法に触れる


君の細い肩が 君の長い指が 君の唇が 時を止める
夏の思い出を 風が消しさるとしたら
今すぐ振り向いて あの頃の映画のような 夏の終わりを


砂の城は足跡伝えて どこに向かい流れされていくんだろう
波の音は鼓動を真似してる


見慣れない想いが芽生えて 光消えてしまう前に 抱き寄せる


君の香りに触れ 君の頬に触れ 君の瞳揺れ 時が止まる
砂の瞬きは 波が消しさるのならば
今すぐ頷いて 心の中の 静かな恋の終わりを


君に出会うまで 夏は真っ白で 君の長いキスで 愛に染まるよ


夢の始まりと 朝の微睡みと 君の柔らかい肌に包まって
やがてくる永遠も 忘れ去る愛のよう
今すぐに聴かせて 心の奥で鳴り響く 夏の終わりを


君の心を知って 君の悲しみだって 僕ら形作る不確かな呼吸は
波の音のように寄せては返すだけ
今すぐに映して 心の奥の映画のような 夏の終わりを


夜空 焦がした 迸しる胸に響いて咲いているよ
君を映しているよ

 
 
 
 
 


 
FullSizeR-2高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」