はい、そんな訳で始まりました〜GAL Radio。ここはラジオを聴くように、友人とカフェで会話するように音楽についてお話していけたらという場所でございます。


人は10代の頃に聴いた曲を聴き続けていくというとある研究結果があります。特に14歳というデータがあるみたいで(第14回という事でこの話題です)私も印象的な曲との出会いが多かった時期な気がします。今ほどネットに情報も多くなく、欲しいCDを探し回ったりライブに足を運んで掴んだ光景にドキドキし始めた頃でした。


そして当時から未だ聴き続けている音楽のひとつ、Mr.Childrenさんの最新映像作品を今回ご紹介致します。思えば彼らの音にずっと感動しっ放しで、音楽雑誌・MUSICAさんにその気持ちを文章で初めて投稿したのもライブDVD「TOUR 2004 シフクノオト」の感想でした。彼らのライブレポートである第7回、番外編と合わせると更にお楽しみ頂けるかと思います。(リンクは下に貼ってます)10代の頃のフレッシュな気持ちを思い出しつつお届けします!

 
 

* * * 

 
 

LIVE DVD / Blu-ray『Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸』
2019.6.26 Release
http://www.toysfactory.co.jp/artist/mrchildren/20190626/

 
 
第14回サムネ用
 
 
●真っ直ぐに放たれる解像度の高い音と映像
 
今回初めてBlu-rayを購入しましたが音と映像の解像度が半端ないですね。ほとんど会場にいるよう。生きること、死ぬこと、失うこと、世界の終わり、またそこから感じる生命力や愛などを想起させる歌詞やメッセージを中心としたガツンとした構成です。
 
「花 -Mémento-Mori-」

 
 

19th Album『重力と呼吸』(2019年10月3日発売)に感じたのは12th Aldum『I♡U』(2005年9月21日発売)のように文学性の高い歌詞やストーリーが多いこと。どこかざらっとしていてロックテイスト成分を多く含んでいるサウンド面の共通項もあり今作品とドームツアーでも『I♡U』の曲は多く披露されています。


2016年に開催されたHall Tour 2016『虹』の開催趣旨のひとつとして「演奏面でダイナミクス(音の強弱、大小)や演奏家としてBank Bandになりたくて」という旨がインタビューで語られていますが、先日の東京ドーム公演「CANDY」前のMCでも「Bank Bandはテクニックの物凄いプレーヤーの方に囲まれるから豪華なお城に住んでいるような優雅な気持ちにはなるけれど、そこで感じた違和感から戻りメンバーの演奏の手触りある、自分たちにしか出来ない音を奏でた時にとてもしっくり来た」(一部要約、意訳してます)という内容が語られており、スキルだけでなくニュアンスだったり自分たちの強みと弱みそれぞれを引っくるめて作品に昇華させる過程が似ているのかなと感じました。私からしたら彼らの演奏はめちゃめちゃ上手いのですが(笑)。


今回のツアーはオーディエンスの想像力を呼び覚ますような演出も大きな魅力。「SINGLES」の東京タワー、「here comes my love」の灯台を表すライティングや、ステージ床のスクリーン映像は彼らが音に包まれているようで特に「HANABI」での煌めきは「聴き始めたあの頃からこれが心の中で起きていた現象なんだ」と輝きを眼に見える形で顕在化させてくれた感覚にすらしてくれます。「ハル」ではステージ上に大きなベールが取り付けられ、空を舞う花びらと空気の揺れ、目には見えない何かがたゆたう動きは形を持たない、変化していく心のような不確かさで、でも確かにそこに存在している様を表しているようでアナログとデジタルを駆使した表現力の強さが映像からビッシビシ伝わる印象的な演出です。


ここで1曲。動画の5分10秒辺りで重力に向かって魂を叩きつけるようなジェスチャーとカメラワークをご覧ください!

 
 
「Dance Dance Dance」

 
 
●原曲キーとりょんりょんさん
 

今回の個人的ハイライトはレコーディングされた曲の音程と同じ高さのいわゆる【原曲キー】で披露された曲達です。「and I love you」「しるし」のラブソング2連発(「くるみ」も来てたらキュン死にしてました)。そして「NOT FOUND」のサビで爆発し解き放たれる喉が千切れても差し出そうとする、この曲の根幹とも言えるシャウト。まさに愛。「どう? 久しぶりの原曲キーいいでしょ?」と言わんばかりに楽しそうな2番サビ終わりの笑顔、必見です。ミスチルの曲といえばカラオケで歌うにもキーが高い曲が多く男性の皆様は苦労されていると思いますが、上記3曲も最近のライブでは半音下げて演奏していました。が、何故今原曲キーなのか?! それは業界では有名なボイストレーナー・りょんりょんさんこと佐藤涼子先生の存在がもの凄く大きいのではないでしょうか。


Hall Tour 2016『虹』で桜井さんの声の調子が悪くなって以降彼らのツアーに帯同されており、発声だけでなくフィジカル面からメンタルまで「心技体」を整えポテンシャルを引き出し、復活どころか産まれ変わったかのような声に仕上げて下さった事で再び挑戦したのでしょう。なので高音だけでなく低音まで淀みないクリアな声で歌うシーンの度にりょんりょんさんの功績に感謝せずにはいられません。先生はファンサービスとしてツアー中のメンバーにまつわるエピソードとして「あれほど素晴らしい歌とパフォーマンスはテクニックもありますが、最高峰なのは桜井さんを始め彼らの人柄」お話されています。そんな再び突き抜ける声で歌う最新曲を2曲続けてご覧下さい!

 
 
「海にて、心は裸になりたがる」1分22秒あたりで見せるダンス

 
 
「Your Song」3分38秒あたりで見せるダンス

 
 

踊りのことを言いたいのではなく、二つの映像の通称カズダンスからも分かるよう、昨今のメンバーは軽やかでしなやかなんです。変化していく強さが優しさへと辿り着いた彼らだからどの演奏も濁りなく瑞々しいのでしょう。

 
 
●「肉体を超え音になる」

ボーナストラックとして台湾・台北アリーナで行われた熱狂の様子が国内本公演では演奏されなかった曲を中心にダイジェストで記録されています。言葉や人種、国境を越えて音と魂が届く素晴らしい映像です。「終わりなき旅」のラスト、音としては収録されていませんがドラムスのJENNさんこと鈴木英哉さんの「We are Mr.Children!」と叫ぶような口の動きにグッときます。


JENNさんと親交のある元JUDY AND MARYのギタリスト・TAKUYAさんも会場に足を運んでおり「今まで見たライブで一番良かった。昔観たレッチリが最高だったけどそれより最高。あの日行われた世界中のライブで一番」と直後にご自身のTwitterで大絶賛されていました。好きな両バンドのメンバーのこういった裏話はファンとして嬉しい限りです。


以前ギターの田原健一さんが「桜井は本当にエンターテイナーで、みんなを驚かせるのが得意」とおっしゃっていて、思っても見なかったこと、想像を超えた瞬間に出会う時、人は心は動かされるし、彼らが語る夢や憧れ、理想へと向かう姿、伸び代のひとつがワールドツアーとかなら面白いなぁなんて勝手に想像を膨らませています。誰もがまだ見ぬ自分に会いに今日を歩き、その先で出会えるから音楽はより輝き、共鳴して響くのでしょう。「肉体を超え音になる」瞬間が毎秒パッケージされた今作、是非是非ご覧になって頂きたい。良いことっぽい事言ったところで今回はこの辺で!

 
 

 
 
 

* * * 

 
 
 
「ねぇ、できちゃった」のコーナー


 

今回で9作目となる新曲は「17」。今年31歳になる男がお届けするセブンティーンです(笑)
七夕にちなんで恋愛の歌がいいなぁと思い、10代の女の子が駆け出していく炭酸飲料のCMソングな気持ち多めでレコーディングしました。good sleeps時代にお蔵入りしていた曲を引っ張り出し、ボーカルのmikaが書いた歌詞を元に作詞家・K Sawadaishi氏と再構築、彼のアイディアで最後の掛け合いパートが加わり一気に曲が化けました。
ギターの音が鳴ったら曲を飛ばすなんていう悲しい話も耳にする昨今に対抗し34秒のギターソロフレーズの一部はQUEENのギタリスト・ブライアン・メイへのオマージュも。是非それぞれの10代と重ね合わせて聴いて頂けたらと思います。

 
 
17
2019.07.07
Words : good sleeps & K Sawadaishi
Music & All Instruments,Programming,
Summer Pictures of Music Videos by Kei Takahashi

 

 
 
17

涙でちゃうことだらけだわ
気づいたの ミニスカートで
地図を描く まだ知らない夏
夢見てる 麗しのアンダースタンド


光る光る 鏡の前でさ
17才 赤いチークでさ
急いでよ やりきれないわ
雨に打たれ わたしは傘の中 ひとり


苦い笑顔 少しの優しい嘘 溶かし 
甘すぎたチョコレート
恋したあなたを思う


永遠に続いていくラヴストーリーを
ご覧 影踏み歩いて 行く先は内緒


高い空 波音見つけて
隣には寂しい横顔
陽炎の帰り道 響く
笑い声 思い出せないわ


紅い空 波音きえた
もうすぐ会えなくなるんだね
夏なんて来なきゃいいのに
叶わないことは何に願えばいいの


靴のカカト潰さず履くから
イタズラに
わざと切なくなるような曲ばかりを


小さな願い 短い時間 旅の途中で
影踏み歩いた ふたりの足跡を


ラヴストーリーの片隅においてよ 思い出を


季節は巡り 恋したあなたを想う
影踏み歩いて
(引っ張って ほつれた 赤い糸の先が
 恋をして 輝いた この季節のように)


永遠に続いていくラヴストーリーを
影踏み歩いて 行く先は内緒
(聴かせて 歌を あなたのその声で
 満たしていくよ この涙は 内緒)


一瞬の思い出だってさ
一生の思い出だってさ
いつまでもこの場所でほころび合うんだろう

 
 
 
 
 


 
FullSizeR-2高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」