始まりましたGAL Radio。ここは友人とカフェで過ごすように音楽の魅力についてまっ たりお話する場所です。ゆっくりしていって下さい。 皆さんは秋を満喫されていますか?僕は10月、上野・東京都美術館で開催中のゴッホ展 や、向ヶ丘遊園・川崎市岡本太郎美術館に足を運び、芸術の秋を堪能しました。絶賛音源 制作中ですが、何かしらの良い影響を与えてくれるだろうと思える素敵な体験でした。今回はその中でも特に心に刻まれた和田誠さんの展覧会をレポートしたいと思います。

 
 

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世代を問わず愛される普遍性


そこは愛で溢れる美しい空間でした。それはそれは大きな愛に包まれてしまい、込み上げる嬉しさで涙が零れるほどに。この感動を残しておきたく、堰を切ったようにこの文章を書いています(一旦落ち着きますね)。

和田誠展の会場は新宿から京王線で一駅、初台にある東京オペラシティ。上野なんかもそうですが、美術館のある街並みは公園と隣接していて自然豊かだったり、都会の中でも 特に洗練された空間が多くて心がクリアになりますよね。

 
 
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オペラシティ内の一角

 
 
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早速可愛らしい

 
 

誠さんは似顔絵や絵本、漫画、装丁、レコードジャケット、映画etc…と様々なジャンルで才能を発揮され、実に多くの作品を産み出して来られました。週刊文春の表紙イラストなんかで一度は皆さんも目にされているかと。今はもう禁煙してだいぶ経ちますが、僕が初めて吸ったタバコは誠さんデザインのハイライトでした(パッケージがお洒落で椎名林檎さんが吸っていたので)。

 
 
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色合いが素敵。緑はメンソール。

 
 

会場に入ってすぐ、開放的な高い天井の部屋にズラリと並んだ誠さんのイラストたち。まるで遊園地に来た少年のごとく思わず「うわぁ…(目キラキラ)!」と感激の声が漏れてしまいそうに(漏れてたかも)自分がワクワクしているのが分かって更にワクワクする感じ(伝わります?笑)。場内は写真撮影OKで皆さんパシャパシャ(私的利用の範囲でフラッシュ禁止など条件がございます。他のお客様へのご配慮も忘れずにね)。作品はもう言わずもがな感動しましたが、場内中央に設置された2列の柱状の年表がとても素敵でして。読みやすい50cmくらいの距離からスマホで撮ると文章とイラストや写真がちょうど画面に収まるサイズになるこのデザイン性! さりげなくすごい。年表を辿るとジグザグに進むようになっていて、まるで曲がりくねった人生の道のりを楽しむようでそれもすごくいい。

年表でTRICERATOPSのほぼ毎年恒例となっている年末ライブを行う12月30日が誠さんとレミさんの結婚記念日だったというのも知れてなんだかほっこり。

たっぷり時間はとっていたのですが、誠さんの絵にずっと囲まれていたいと思うほどのやさしさに包まれてしまい(ユーミン)その後の友人と会う約束を2時間半ずらしてもらうことに…(しかも先輩を)。

訪れていらっしゃる方には、杖をついた仲睦まじい老夫婦から、美大か芸大の学生さんでしょうか、ファンキーなファッションの方まで老若男女幅広い年代。作品が放つ普遍的な魅力がひとつの文化と言っていいほどに多くの人に愛を届け、また愛されていたんだと肌で実感。マスク越しですが皆さん目元がほころんでいらっしゃる表情とお連れ様と話す声のトーンから同じような気持ちなのかなと想像してニヤける33歳の秋(不審者)。

ネタバレになるので詳しくは是非会場でご覧頂きたいのですが、原画だけでなく貴重な作品が多数展示されており、ファンは勿論はじめてご覧になる方もきっと楽しめる空間だと思います。

 
 

シンプルであることの強さ


今回、和田誠さんファンの方もこの文章をご覧になられるかもということでお伝えしておきたいのは、わたくし僭越ながら、ご長男・和田唱さんフリークでございまして、途中から唱さんの楽曲をイヤホンで聴きながら作品を見たのですが、それはもう更にやさしさに包まれてしまいまして…(ユーミンPart2)なんだか胸の奥から湧き上がる懐かしく嬉しい愛おしさで自然とマスクの下は満面の笑みを浮かべていました(通報案件)。

特に誠さんが撮影されたレミさんと唱さんのお写真がジャケットのソロ2nd Album『ALBUM.』オススメです。(よろしければ連載過去回も合わせてご覧下さいませ。下記URLございます)

これはあくまでも個人的な感想ですが、唱さんが音楽で表現されていることと誠さんの作品には共通点があると感じました。

 
 
 


シンプルでありながら真似できない
ルーツを大切にしたオリジナル
優しくて強い、愛を感じる作品

 
 
 

そんなイメージが結びつきました。少ない音数や線で描かれる人物や風景は芯のあるしなやかな美しさを放ち、心を柔らかくしてくれます。

誠さんの作品との出会いは幼少期、なんの本だったかは忘れてしまいましたが、両親が買った誠さんが表紙を描いた本が家に何冊かありました。小学4年生頃に唱さん、トライセラの音楽と出会います。後から「自分の好きな絵を描く方と音を鳴らす方がご家族なんだ」と知って、なんだかお二人の作品を好きになれた事に勝手に誇らしい気分になったのを覚えています。

 
 
画像5&サムネ用
この猫ちゃんのきゃわいさに一番やられてしまいました…フォルムがたまらない!

 
 
 

「人生は好きを増やしていく旅」


生前、とある場所で誠さんを一度お見かけしたことがありました。プライベートでしたのでお声掛けはしませんでしたが今思えば「あなたの作品に触れて育ちました」と感謝だけでもお伝えしたかった。

人は誰しも産まれた瞬間から死に向かいます。時間だけが平等である世界で、どれほどの愛を共有出来るか、出会った人を楽しませられるか。誠さんはそんな事を体現された方だったのではと想像しています。多ければいいとか競い合いとかそういうことではなく、たったひとつあるだけで生きていける、そんなぬくもりのある瞬間をくれる人ではないかと作品に触れる度思うのです。

「人生は好きを増やしていく旅」って誰かが言っていました。辛い時、悲しい時も無理はしないで、自分が好きなことをやるだけでいい。それが回り回って誰かの為になるかもしれないし、ならなくてもいい。夢があって、優しさを持って、美味しいものを作って食べて、絵を描いて、歌を歌う。そんな日常を大切に生きた証のひとつひとつが宝物で、幸せは今そこにある。そんな風に今回受け取りました。誠さん、そして作品がもたらしてくれたのは好きなものを心に持てる喜びではないかと感じます。

アートは自分の外にある新しい何かに出会うことであり、自分の中にある何かに気付くその両方を可視化する行為。東京開催は12月まで。まだまだ深まる秋から冬、きっと暖かい気持ちと出会えます。

改めてお伝えさせてください。
「和田誠さん、たくさんの素敵なギフトをありがとうございます。」

 
 

和田誠展
12月19日(日)まで開催中
東京オペラシティ アートギャラリーにて
https://wadamakototen.jp

 
 
 
 
 
 
オススメしたい! のコーナー

和田誠展を観ながら聴いて感動した「和田唱さんオススメプレイリスト」をご紹介

1.ココロ
2.シャンデリア
3.1975
4.2020 / TRICERATOPS
5.ポスターフレーム / TRICERATOPS
6.クリスマスの朝
7.さよならじゃなかった
8.アイ
9.ネオン / 藤井フミヤ
10.笑顔でいるのが僕の役割り

※名称なしはソロ曲
▼Apple MUSIC URL

 
 
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第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」

 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」