始まりましたGAL Radio。2020年ももうすぐ終わろうとしています。今年を振り返るとルーツに触れる機会を多く持てたことは大変貴重な経験だったのですが、正直半分くらいは自分に言い聞かせているところもありまして。。。新しい音と出会うはずだった時間が失われてしまったのは、やはり心残りでした。


そんな日々に突然届いた「最新」は力強くもやさしい最高の作品でした。Mr.Childrenさんが12月発売予定のアルバム『SOUND TRACKS』より「Brand new planet」の映像をYouTubeで公開、多くのファンが今まさに胸打たれていると思います。この曲が放つ歌詞やサウンドの魅力を3つのポイントにおまとめ、お話して参ります! では早速お聴き下さい!

 
 

https://youtu.be/pczkqXFlwWc

 
 
ライブさながらのパフォーマンスを繰り広げる4人の距離感や表情は必見です。
 
 
 
 

*   *   *

 
 
 

魅力① 「歩道橋」が意味するもの


「立ち止まったらそこで何かが終わってしまう」と走り続けてきた主人公が、夜空を見上げるシーンから曲が始まります。ここで凄いなあと感じるのが歩道橋が意味しているものです。日常の風景の中でいつもより少し「空に近い」場所であり、自分が進んできた道とこれから向かう道の両方を物理的にも精神的にも客観的かつ俯瞰的に(的が多い)「見下ろせる」状態を表し、ふと足を止める場所No.1としてこの上ないメタファーなんです!! 驚きです、凄すぎて。輝く星々と胸に秘めていた憧れが重なりこの曲のキーワード、新しい「欲しい」へと繋がっていきます。タイトルの和訳「新しい星」と新しい「欲しい」をかけるところ、流石です。

 
 

魅力② 静かに葬ろうとした憧れを解放させる「韻律学」


ここで少し音楽的な話をさせて下さい。韻律学とは「音と言葉の意味やストーリーがリンクし、お互いの意味合いを強調していく表現方法」(超ざっくり)優れた曲に隠し味として込められています。音楽は緊張と緩和を繰り返し、不安定な道筋を辿り解決する音に着地することで安心し心地良く聴こえるという要素があります。


では美しいサビのコード進行を韻律学の視点でサンプル音源と合わせて見てみましょう。


●サンプル音源



1サビ(多分こんな感じです)
D         B♭dim7   Bm7   Bm7/A    G    A      Dsus4 D
静かに葬ろうとした  憧れを解放したい 消えかけの可能星を見つけに行こう


 A/C#   Bm7     A/C#    D     E     G       A    D
何処かでまた迷うだろう でも今なら遅くはない 新しい「欲しい」までもうすぐ


:メジャー→明るさ
:dim7(ディミニッシュセブンス)m(マイナー)→不安定さ
:オンコードまたは分数コード→コードの中のルート音を別のものに差し替えることで緊張感が生まれそれを解消してくれる音に行きたくなり音の推進力が増すイメージ


不穏さを醸し出すB♭dim7に「葬ろうとした」というハッとする言葉を乗せ、分数コードの箇所は心理的な揺らぎのグラデーションを描き、D E G Aなど明るい響きのメジャーコードには「見つけに行こう」「遅くはない」といった前向きな言葉、といった具合に歌詞と和音がリンクしています。


静かなAメロとサビの演奏の奥行きを一気に広げるギャップも「憧れを解放したい」思いの湧き上がる速度と強さを感じさせます。歌詞と和音だけでなく演奏もこの曲の核となる「憧れを解放したい」でバンドが入ることで4人の新しい音を鳴らすこと、その憧れこそ新しい「欲しい」であることが表現されています。


クリアで浮遊感のある音色のAメロは心の外の宇宙、特に歌声が炸裂するダイナミックなサビは心の内側の宇宙を表現しているように思いました。歌詞も風景描写と心理描写で見事に分かれており、落ちサビでその境界線が混ざりラストへと向かう展開。凄すぎて震えますわ!


一瞬でこれらの情報量を伝える音楽、韻律学から彼らの魅力を再認識します。

 
 
 

魅力③ 想像力で「風を見よ、星の王子さま」


2番Aメロ「ねぇ 見えるかな?点滅してる灯りは離陸する飛行機」と問いかける部分「見てよ」とお願いするでもなく疑問形で伝えることで目線と意識を自然と空へとエスコートしてくれます。

サン=テグジュペリ・著『星の王子さま』で「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」という言葉があります。

中国の老子か何かの問い掛けで「風を見よ」と言う思想があり、草木の揺れや旗がはためくのは風によるものだがそれ自体は風ではない。風は「風が吹いている」と感じる心が産み出すものだと。「確かに存在するのに目で見ることができない偉大なものがこの世にはある」と。

ただ飛行機が飛んでいるだけに見えても乗る人たちはそれぞれ夢を抱いていて、その思いが明日を創っていくと想像すること。そんな想像力を働かせて物事を見る見方も含めての「見えるかな?」なのではないでしょうか。歌詞にはありませんが星も飛行機も欲しいも「上を向いているからこそ見える光」なんだよと語りかけられているようです。

遠い町で暮らしたら〉と現実逃避する思考を砕くべく登場するのが〈さぁ 叫べ Les Paulよ〉(この擬人化!)音楽は世界を変えることは出来ないだろうけど自分の心は少しでも前向きにしてくれる、そんな小さくも誰にも邪魔できない心の動き、小宇宙を感じます。

レスポールはエレキギターの代表的な機種で、テレキャスでもストラトでもグレッチでもなくレスポールなのがグッときます。(理由は長くなるので想像してね♡)

 
 
画像1のコピー
手前がレスポール!

 
 
 

●新しい「欲しい」までもうすぐ


落ちサビの「さようならを告げる詩、この世に捧げながら」はどこか終末を感じさせます。前作『重力と呼吸』を引っ提げたドームツアーのMCでボーカル・桜井和寿さんは「対峙すべきものは時間。あとどれくらい音楽を続けられるか考える。あと10曲みんなの心をひとつにするような曲を作りたい。(一部抜粋)」と話されています。

MVの枯れたビンテージギターのごとく年季の入ったマットな部屋は“MINE”と名付けられています。暗闇に覆われながらも射し込む優しい朝の光が淡く照らします。

mineには「私のもの」以外に「発掘する、探し当てる、くつがえす、破壊する」という意味も。この曲の主人公は冒頭で立ち止まったからこそ気付きます。日々様々なことが起き、目まぐるしいスピードで通り過ぎていきます。疲れたら休めばいいし残された時の中で何が出来るかを突き詰めた今の彼らが心を込めて奏でる姿からそんなことを学びます。

最後も「もうすぐ」で終わるのもすごく良いですよね。今もこの先もずっとワクワクしているよという新しい思いが詰まったアルバム、なんとしても受け取りたいのです。新しい欲しいまでもうすぐ!!

 
 
画像2&サムネ用

▼Mr.Children 20th Original Album『SOUND TRACKS』特設サイト
 
 

*   *   *

 
 

●高橋 圭からのお知らせ
①ソロ楽曲各配信サービスにて好評配信中です。
https://www.tunecore.co.jp/artists/takahashikei

②Yuzukana 2nd mini album「ZUSHIKI」にミックス、マスタリングで参加しました。
▼Yuzukanaオンラインショップにて販売中
https://yuzukana.base.shop

③HIROKI OOTSUKA の映像作品にレコーディング、撮影スタジオ提供で参加しました。
▼叩いて鼓舞する音楽作品・「始まりはテーブルの上!」
https://cheerforart.jp/detail/5137

 
 
 
 


 
今回用プロフィール
高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始。2枚のシングル、1枚アルバムをリリース。2016年活動休止。演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けた意欲作。アルバム『RADIO WAVES』、シングル『ひまわり』共にApple Music、Spotifyなどで配信中。
お仕事依頼はTwitterからお待ちしております。Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモー ショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」