始まりましたGAL Radio。春ですね。お花見はしましたか? 今年の桜も綺麗に咲き誇りました。お散歩が最高に楽しい季節、春。昨年、人生3度目の「徒歩で山手線一周」を達成しました(歩きすぎ)。マラソンに匹敵する距離を、友人とお酒を飲みながらひたすら歩くさまは修行であり愚行。全身(特にお尻、膝、足裏)が鉄のようにガッチガチになりますが歩いた者だけが感じる何かがあります。生きている実感を味わいたい方はオススメです(できれば山手線は乗った方がいい)。

最近命について考える出来事がありました。今日は命と音楽の関係についてお話させて下さい。音楽はどこからやってくるんでしょうか?

 
 

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30年前。兄、祖母と花巻温泉バラ園にて。

 
 

3月27日の夜、母方の祖母が息を引き取りました。89歳の大往生でした。
天国の祖父母は皆、音楽が大好きでした。父方の祖母は日常的によく歌う人(かなり大きめな声量)で、父方の祖父は若い頃ドラムを叩いていたそう(酔っ払っていた時の話なので真偽は定かではない)。母方の祖父は恥ずかしがり屋ながら自宅にカラオケの機械を買うほどで、母方の祖母は生前、大学の学園祭や原宿にあったライブハウス、アストロホールに僕のライブを観に来てくれたり(当時79歳)、今の僕があるのもその影響を受けたからと言えます。

 
 
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白髪がイカしたお洒落ばあや

 
 

祖母は岩手県花巻市で暮らしていました。昔は宮沢賢治、今は大谷翔平選手で有名な自然豊かな場所です。一昨年、祖父が亡くなってから食欲も衰退し元気をなくしていました。昨年末、主治医の先生から「持って年内かもしれません」と一緒に暮らす親族に伝えられたことを受け、ずっと「鎌倉にもう一度行きたい」と言っていた祖母の願いを叶えようと、半ば強引に車椅子に乗せて僕の住む鎌倉に連れて来ました。

東北の寒い冬が終わるまでの4ヶ月間一緒に暮らしました。ご飯を作ったり、姪っ子の誕生日をお祝いしたり、姪っ子が所属するジャズバンドの演奏会を鑑賞しに行ったり。ほんのわずかかも知れないけど、今まで受けた愛情を返すように、日常を慈しむように過ごした日々でした。(NUMBER GIRLの解散ライブ生中継も一緒に観たね)

来た当初はほとんど歩けなかったけど、元気な時は杖をつきながらお散歩した日も。美味しいご飯を作りすぎたせいか、お袋に嫌味を言うほど元気になりすぎ、一言多い祖母とお袋は喧嘩する毎日。優しさゆえの厳しさと信じたいと思いながらも、辛辣な発言に、僕もつい冷たいことを言い返し悔やむことも。「なんであんなこと言っちゃったんだろう」、「もっとやさしくしてあげたかったなぁ」と思ったのはそのすぐあとのことです。

3月末、無事花巻に祖母を送り届けました。4ヶ月ぶりの我が家に安心したのかホッとした表情をしていました。僕が帰る日、別れ際に抱きしめたら弱い力でそっと抱きしめ返してくれました。散々酷いことも言いあったのに「たったひとりの母親なんだから大切にしなさいよ」と仏様のような穏やかな微笑みで祖母は言いました。(お袋への労いの言葉とも取れる思いを本人じゃなく孫を経由して間接的に伝えるスタイル)それは映画のジャイアンさながら、ずっと嫌な奴だったのにクライマックスで助けてくれる実はいい役だったみたいで「こういう時だけいい人になるのずるいよ」って思ったけど、菩薩ばりの微笑み返しで答えました。それが僕と祖母の最後の思い出です。亡くなったと連絡を受けたのはそれからわずか4日後のことでした。

 
 
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若かりし頃の祖母と祖父

 
 

心は無くならない


覚悟はしていたけど、思っていたよりも早く来てしまった別れはやっぱり寂しくて、でも大きな愛に包まれているような感覚が強かったです。そしてこの状況でも、大切な音楽を聴いたり作る時間が心の救済となっていました。

冒頭の問い「音楽はどこからやってくるのか?」音楽はきっと心からやってきます。誰もが知っていることかもしれないけど、改めて今、そう感じています。

録音された音楽を聴く行為を「再生」って言いますよね。そこに宿る、鳴らした人の心、魂が蘇る時、同時にその音楽を聴いていた時の自分、その時一緒にいた人との記憶も蘇る機能が音楽にはあります。その瞬間には戻れなくても、その時の心が再生する。名付けた人、凄いよね。

音楽も心も確かに存在しているけど目には見えません。つまり音楽を信じるということは目に見えないものを信じるということ。優しさが必ず誰かとの間にあるように、鳴らす人と聴く人がいて初めて音が音楽になるように、誰かの心に残るような音を奏でたい。これからも音楽と共に生きていきたい。そう思っています。

亡くなった人を思い出すと、天国ではその人の上に花びらが舞い散るという話を聞いたことがあります。たくさん思い出したから今頃、北島三郎さんの紅白歌合戦の紙吹雪くらい大量の花吹雪が吹き荒れる中、みんなでお花見してるといいなぁ。おばあちゃん、たくさんの愛をありがとう。またね。

 
 
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親交のあるイラストレーター・YUKI*さんが大切な思い出をご厚意で描いて下さいました。
Twitter:@cosmicyuki

 
 
 
 
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ここ何週間か僕を救ってくれた音楽たち。おかげで今を乗り越えられそうです。
heart lives with music


1.Life is… / 平井 堅
2.Sign / Mr.Children
3.おなじ話 / ハンバート ハンバート
4.さよならじゃなかった / 和田唱
5.私の瞳は黒い色 / YUKI
6.魔法の料理~君から君へ~ / BUMP OF CHICKEN
7.幸福のカノン / Bank Band
8.アポトーシス / Official髭男dism
9.Remember Me (Wien Mix) / くるり
10.サヨナラCOLOR (Live) / SUPER BUTTER DOG


▼Apple Music プレイリスト

 
 
 
 
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▼DL & Streaming

 
 
 
 
 


 
2021.08~新プロフィール画像高橋圭(たかはし けい)●作詞・作編曲・演奏家 1988年5月3日生まれ。2011年よりgood sleepsの作曲、ギターとして活動開始、2016年活動休止。現在は演奏から録音、ミックス・マスタリングまでを自身で手掛けるスタイルでソロ活動中。楽曲はApple Music、Spotifyなどで配信中。レコーディングなどお仕事依頼はTwitter DMからお待ちしております。
Twitter:@zazamino

イラスト:matsun
 
 
 
 
 

 
「Ginger Ale Lover’s Radio」ここまでの道のり
 
第1回「はじめましてのご挨拶(自己紹介)」
第2回「Guitar~ダサい僕が手にした最高の相棒~なんでこんな邦題足したの? っていうB級洋画の和訳タイトルみたいなダサさ(ギター愛を語る回)」
第3回「真夏の特大号 想像力(YUKI『チャイム』レビュー、久しぶりのライブ、真夏のドライブプレイリスト)」
第4回「バンドは生き物、刺身はナマモノ。(赤い公園特集)」
第5回「Mr.Children(メジャーセブンス、センス、スタンスとバランス)」
第6回「Mr.Children 『重力と呼吸』アルバムレビュー」
第7回「ミスチル、YUKIライブレポート特集」
第8回「新春新曲祭」
第9回「レコーディングオタク」
第10回「YUKI 『forme』アルバムレビュー」
第11回「音楽で逢いましょう」
第12回「good sleeps Album『SIGNAL』セルフライナーノーツ」
第13回「雨ソング特集」
第14回「Live DVD &Blu-ray『Mr.Children 『Tour 2018-19 重力と呼吸』ディスクレビュー」
第15回「BUMP OF CHICKEN NEW ALBUM『aurora arc』アルバムレビュー。何故彼らは宇宙を歌うのか」
第16回「竹内まりや「カムフラージュ」から学ぶ切なさ講座」
第17回「新曲発表のコーナー『ねぇ、できちゃった』完結編!」
第18回「YUKI『聞き間違い』から学ぶ “ きっと大丈夫 ” 講座」
第19回「何故私たちはクリスマスソングを作り、聴くのか」
第20回「TRICERATOPSから学ぶリフで踊ろう! 講座」
第21回「3ヶ月連続企画! 第1弾 Chara +YUKI『楽しい蹴伸び』から学ぶ無意識の美しさ」
第22回「3ヶ月連続企画! 第2弾「Chara +YUKI 『echo』全曲レビュ ー」
第23回マイフェイバリットエモーショナルソング 10選」
第24回「和田唱(TRICERATOPS)『ALBUM.』から学ぶ笑顔の大切さ講座」
第25回「『ねぇ、できちゃった』のコーナー夏の特別編! 新曲「ひまわり」セルフライナーノーツ」
第26回「ニッポンの偉大なギター名盤10選」
第27回「夏とシティポップ」
第28回「初秋にこそ聴いて欲しい、サザンオールスターズ『真夏の果実』の魅力」
第29回「温かみ、手触りを感じる名作 Yuzukana 『ZUSHIKI』制作秘話!」
第30回「Mr.Children『Brand new planet』レビュー」
第31回「Mr.Children NEW ALBUM『SOUNDTRACKS』レビュー 〜人との出会いと音楽の化学反応〜」
第32回「TRICERATOPS トリビュート盤レビュー&ライブレポート!」
第33回「写真家・薮田修身 展覧会『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』レポート」
第34回「新企画!『YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう』始動!!」
第35回「YUKI『Baby it’s you』が示す、君と私の世界が愛と音楽に満ちている理由」
第36回「YUKI NEW ALBUM 『Terminal』レビュー」
第37回「ホタルライトヒルズバンドNEW ALBUM『SING A LONG』レビュー」
第38回「東京スカパラダイスオーケストラ 『TOUR2021 Togeter Again!』ツアーファイナルライブレポート」
第39回「新しいギターを買ったよ!」
第40回「音楽と食」
第41回「NEW SINGLE『花束』が出来るまで」
第42回「和田誠展で感じた普遍的な愛」
第43回「クリスマスソングの新たな名曲! Yuzukana『POST』ライナーノーツ」
第44回「YUMECO RECORDSのテーマソングを作ろう! デモ音源フル尺完成!!」
第45回「Official髭男dism「Pretender」から学ぶロマンス論」
第46回「YUMECO RECORDS テーマソング企画 Season 2 スタート!」
第47回「音楽プロデューサー・蔦谷好位置の魅力 & 蔦谷さんクイズ優勝報告!」
第48回「TRICERATOPS NEW ALBUM『Unite / Divide』レビュー」
第49回「アートディレクター・森本千絵さんとMr.Children」
第50回「YUKI ソロデビュー20周年記念企画第1弾 私が『ビスケット』を好きな理由」
第51回「スタジオデスクをDIY!!」
第52回「妄想! 脳内夏フェス2022!」
第53回 YUKI ソロデビュー20周年特別企画第2弾 「描き続けてきた『歓びの輪』」
第54回「ドラマ『silent』と主題歌 Official髭男dism『Subtitle』が丁寧に紡ぐ音と言葉」
第55回「YUKIソロデビュー20周年記念特別企画第3弾『Oh!ベンガル・ガール』レビュー」
第56回『「YUMECO RECORDSのテーマ」リリース!』
第57回「YUKI 『concert tour “SOUNDS OF TWENTY”』ライブレポート」
第58回「YUKI NEW ALBUM『パレードが続くなら』レビュー」