突然ですが、質問です。
 
好きなことを尤もらしい理由をつけて、あきらめたことはありますか?
愛情を持つことに疲れて、飽きたふりをしたことがありますか?
真剣になるあまりに苦しくなって、馬鹿々しいと嘘をついたことはありますか?
 
私はあります。
 
では、もうひとつ。
 
好きなことを好きなだけ、続けられたことはありますか?
好きなものに、言い訳をせず「愛している」と言えますか?
 
申し遅れました。私、イシハラマイと言います。
この質問にいつか、自信を持って「YES」と答えたくて、今もこの文章を書いています。タイトルからもお察しのとおり、この連載は昨年度よりの続投です。前シリーズから読んでくださっている皆様、先月さんざん最終回だと騒ぎましたが、出戻って参りました。今年度も何卒よろしくお願い致します。初めましての皆様、私が何者かは、後ほどゆっくり説明致しますので、もうしばらく読み進めていただけますと幸いです。
 
当連載では私が愛する音楽や、それを作る人について、超個人的なエピソードを交えながら紹介していく予定です。前シリーズと、基本的には変わりません。毎月特定の「ロックンローラー」に注目し、語ってゆきます。新しい試みとしては、最後にあとがき的な意味合いも込めて、エンディングテーマとして1曲紹介するコーナーを設けました。こちらにはメインで取り上げたのとは別のミュージシャンの曲が登場します。お楽しみに。
 
それでは、早速今月の「ロックンローラー」の紹介に移ろうと思います。1年間、全12回。よろしくどうぞお願いします。
 
 
■「ロックンロールのそばにいて」― イシハラマイ


 
①photo by Airi Okonogi

Photo by小此木愛里

 
栄えある第1回目は……私です。すみません。初回なので自己紹介をさせてください。次回からはちゃんと格好良いロックンローラーが登場しますので、何卒。
 
改めまして、イシハラマイと申します。
ロックンロールというものに心を奪われ、観聴きするだけでは飽きたらず、自らの言葉で語りたい、広めたい、と文章を書き始めた音楽ライターです。ロックンロール。それは辞書的にいえば音楽ジャンルのひとつに過ぎない言葉。しかし、私にとっては目指すべき「生き様」を示す重要なキーワードなのです。「イキザマ」、というより文字のまま「生きる様子」で「生き様」とでも言いましょうか。何を思い、何を伝え、何に笑い、何に泣くのか。そのジャッジメントをする際に、一本筋の通った心意気があること。そして、ちゃんと格好をつけて、信念の襟を正して、自らの正義を全うするために在ること。少なくとも、私の大好きなロックスターは皆、そういう「生き様」を見せてくれる人たちでした。
 
昨年度の連載をきっかけに、ライターとしての活動の幅も広がり、WEBメディアや雑誌で記事を書かせていただく機会にも恵まれました。まさか『音楽と人』に自分の書いた記事が載るなんて、10代の自分は露程も想像できなかったことだと思います。しかし、私は音楽ライターとして活動する一方で、音楽とは全く無関係の会社で働く会社員でもあります。そして正直、それがずっと負い目でした。だから、この連載以外では「もうひとつの生活」のことは一切話題に出していません。
 
ライヴレポートやインタビューなどの場合は、主役はミュージシャンや作品。ですが、この連載では私が案内人。なので、ここでは私の「生き様」の一環として少しだけ、お伝えしている次第です。前シリーズでも、この立場については何度か書いています。いますが……、今だから言えますけれど、本当は悔しくて悔しくて仕方なかったのです。世間によくある「OLシンガー」とか「女子大生投資家」みたいな二足の草鞋キャッチコピーみたいなのが自分につくかと思うと、「そんなの全然ロックンロールじゃない!」と、耐え難いものがあって。でも前回の連載を始めるときに、上野さんが私のこの二重生活を「面白い」と言ってくれたり、丑三つ時まで原稿を書いて6時に起きて会社に行く私を「かっこいい」と言ってくれる友人がいたり、「就職しても私も音楽好きを、続けていこうと思います」って大学生の子が言ってくれたりするものだから、今となっては書いて良かったと思っていますし、書くべきだったと思っています。
 
そうは理解しても、感情はまだそっぽを向いていたある日、私はこの件にようやく落とし処を見つけました。答えをくれたのはやはり、ロックンローラーたちの「生き様」でした。去年1年間ライターとして活動をする中で、ミュージシャンの方々と色々な話をしてきました。新譜の話、ライヴの話、バンドの今後、ひいては人生観まで。ステージに立てば聴く者を魅了するロックスターでも、ステージを降りれば、ライヴハウスを出れば、楽器を置けば、彼らはひとりの生活者。仕事をしていたり、学校に通っていたり、家庭を持っていたり。でも彼らは初対面の時、私が名刺を差し出すと、決まって「○○のギターの××です」というように挨拶をしてくれる。他の立場のことなんか、おくびにも出さずに。
 
そんな彼らに音楽のことやバンドのことを尋ねると、ズシっと重たい決意から大言壮語まで、熱っぽい言葉の数々が返ってくる。その顔は、100%ミュージシャン。その顔を見て、目が覚めました。負い目なんて生ぬるいものを抱えながら、ロックンロールを相手取ろうなんて、100年早かった、と。正直、二重生活は、楽じゃない。書くことにしても、きっと音楽を続けるにしても。まず物理的な問題として活動時間が限られるし、戦わなきゃいけない相手も増える。ふと油断すると、好きで始めたことのくせに、「やめたら楽になるんだろうな」なんて考え出す自分もいます。それでも、記事を書いたり、ステージ立ったりしている自分が、労働をしたり、授業を受けたりしている自分よりも少し、格好良いと思えるから、やめられないのだと思います。勿論、そっちの自分だって、基本的には悔しい思いばかりしているし、ふがいない。それでも、全部ひっくるめても、愛しい。なぜなら自分の愛するものを、ちゃんと愛せているから。
 
だから1秒でも長く、ロックンロールのそばにいたいし、バンドマンたちには1秒でも長く、ロックスターであって欲しい。
 
今思うのはこんなところです。
 
②photo by Airi Okonogi

Photo by小此木愛里

 
 
■end “ROCK’N” roll vol.1― GLIM SPANKY「NEXT ONE」


 
そしてこちらが今年度からの新コーナー。「end “ROCK’N” roll」と題して、締めの1曲を紹介していきます。第1回目は1月27日発売のGLIM SPANKYのニューミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』より「NEXT ONE」!〈歓声が鳴る方へ 野望を転がして 道無き道を行けば 開くよ挑む世界が〉という歌詞がなんとも痛快なロックチューン。私自身、去年は色々なチャンスに恵まれて、思ってもみなかった挑戦まで出来てしまった1年でした。だがしかし、初回は運でも、2回目からは実力だと思っているので、今年の目標は去年掴んだもの全部の「NEXT ONE」を実現させてゆくこと。ロックンロールであるために、私も「ワイルド・サイド」を行こうと思います! 戦う人に、捧げる1曲。ぜひ。
 

 
 
 
 
 


 
①photo by Airi Okonogiイシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。連載2年目突入!今年度もよろしくお願い致します。記事の写真は、ライヴ写真や動画などを手掛けるカメラマンの小此木愛里氏に撮っていただきました。私にインディーズシーンの魅力を教えてくれたのも彼女。撮影後は二人ではしご酒。話題の中心はやっぱり、バンドのこと。
 
 

 
 
  最終回「Rock ‘n’ New Year!!」
  第11回「ハイライト・トワイライト・ブルース」
  第10回「ロックンローラーよ、汝の過去を愛し、来たるべき未来を抱きしめろ」
  第9回「ロックンロール対談:イシイマコト(ARIZONA)×村上達郎(Outside dandy)×恵守佑太(The Doggy Paddle)」
  第8回「ケレンロックのすゝめ」
  第7回「男心と、曇り空」
  第6回「The cold tommy『FLASHBACK BUG』インタビュー」
  第5回「平成の流し、世にはばかる」
  第4回「ロックンロールの神様に踊らされて」
  第3回「愛しき遠吠えのロックンロール」
  第2回「The cold tommy解体新書的インタビュー」
  第1回「やめられないから愛してる」