神戸出身の4人組バンドThe Sondbardsが、メジャーデビュー作となる1stフルアルバム『CHOOSE LIFE』を昨年11月20日にリリースした。バンド名の由来にもなっているほどThe Beatlesを敬愛する彼ら。グッドメロディーとシンプルで温かみのあるバンド演奏、そしてそれらを彩る4人全員によるコーラスワーク。古き良きUKロックの面影も色濃く感じるサウンドは、流行り廃りに左右されることなく、何年、何十年先も愛されていくのだろうと感じる普遍的な魅力を秘めている。2017年3月のバンド結成から、2年強で掴んだ今回のメジャーデビュー。今作『CHOOSE LIFE』や楽曲制作の話を通して、全楽曲を共作する2人のギターヴォーカル上野皓平と松原有志の達観した人生観が垣間見えた。
 
 
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左から Vo./Gt.上野皓平、Gt./Vo.松原有志

 
 

あらゆることにきちんと意味を持たせたい


 

ーーこの度はメジャーデビューおめでとうございます。結成から2年強でのメジャー進出は、はた
から見ると早い印象を受けますが、ご自身ではどう感じていますか?
 
上野「僕ら2人はThe Songbardsの前にも同じバンドをやっていたんです。趣味の一環として何もわからないところからバンド活動を始めて色々学ぶことがあって、結果的にその期間が下積み時代のような感じなんですけど、2017年にThe Songbardsを結成してからは確かに体感的には早かったかなと思います」
 
 
ーー掴むべくして獲得した機会というわけですね。
 
松原「メンバーは4人とも同い年でもともと友達なんですけど、バンドを仕事っぽくしすぎるとうまくいかなくて、活動の方向性で衝突することもあったんですね。でも、僕たち自身が楽しむことを第一にと、全部話し合いながら一つひとつ地道に解決してきました。だから今回のデビューも、もちろん勝手にという感じでもないし、瞬く間にという感じでもなく、4人が『これでいいのか?』と不安に思いながら失敗と成功を繰り返してきたことに対して、周りが答えを出してくれたんだと思っています。まだ本当にスタートなんですけどね」
 
 
ーー今作の新録曲は、メジャーデビュー作になるということは制作前から決まっていたんですか?
 
上野「そうですね」
 
松原「でも、1stアルバムを作るにあたって再録曲も入れるので、コンセプトアルバムにはしないって決めていたんです。だから新録曲もテーマやコンセプトは考えずに制作に入りました」
 
 
ーーでは収録曲のラインナップはどう決められたんですか?
 
上野「再録曲をどれにするかは、聴く時期によって意味が違うように取れる曲というのを基準に「Inner Lights」、「青の旅」、「春の香りに包まれて」の3曲を選びました。聴く時の精神状態によって、印象や感じる部分が変わる曲。これから聴いてくれる人が増えて、いろんな人に、いろんな時期にずっと聴かれる作品であってほしいなと思ったので、そういう選び方をしました」
 
 
ーーなるほど。新録曲はどうですか?
 
上野「やっぱりフルアルバムだからこそできる、遊び心のある曲も入れたいなと思って、「グッドラック・ドリー」なんかはそういう雰囲気になったかなと。あと7曲目の「Othello」は、今までの自分たちとはまた違った側面が入った曲になったと思っています。今までは、自分が影響を受けた一つのセンテンスや思想を、覚えておいたり反芻するために曲にしていたんですけど、そうするとなんだかすごい激しい感情っていうのは、僕の場合はあんまりわいてこなくて。でもそういう曲をやりたいという気持ちはもちろんあったし、今までの自分たちとは違った側面も出せるかなと思ったので、新しい試みとして一つのストーリー、今回はシェイクスピアの同名小説を参考に激情型の男の物語を曲にしてみました」
 
 
ーー新たなテイストの楽曲も生まれつつ、みなさんの代名詞とも言えるコーラスワークも健在。改めて「春の香りに包まれて」のサビのハーモニーは本当に美しいですね。
 
松原「やっぱり人間がやっていることなんで、その面白さは最大限生かしたいなと思うんですよね。例えば、歌わなくてもキーボードが入ってきて和音を鳴らせば、音圧的にはコーラスしているのと同じかもしれないけど、そこをあえてコーラスでやるっていうのが、音源もライブもあるバンドならではの面白さだってことが、4人とも分かったんですよね。そっちの方が面白いって納得したというか」
 
 
ーー最終的には、「人生は選択できる」というリスナーへのメッセージが込められているとのことですが、そういうメッセージ性の軸はどの段階で見えてきたのでしょう?
 
松原「『人生は○○だ』って、僕ら程度の年齢でいうのはおこがましいんですけど、人がどうやって生きるかというのはずっとバンドのテーマになっていることなんです。もちろんそういう楽曲も今まで作ってきたし。だからコンセプトは考えずに制作に入ったけど、曲が上がってきたレコーディングの後半頃にタイトルを決めている中で『CHOOSE LIFE』を提案して、メンバーもそれがいいねってなった感じですね」
 
上野「タイトルについては、4人が何個かアイディアを出したんですけど、曲が揃い出してる段階でこれだけいろんな曲調の曲があってバラバラだけど、人生もバラバラな中から選択していくことは当たり前にあるし、そういうことをまとめるのにこの『CHOOSE LIFE』というタイトルが一番しっくりきたかなと」
 
 
ーーこういう節目のタイミングですし、そこにこういうタイトルのアルバムが出てくるのって必然的であるように感じます。
 
松原「僕らの性格上なんですけど、あらゆることにきちんと意味を持たせたいんですよね。例えば今回のジャケットもそうなんですけど、メンバーの顔を出そうと決めていたんです。歌詞のある音楽を作っている以上、『どんな奴が歌ってるんだ』っていうのが紹介的に分かるほうが理にかなっているんじゃないかなと思って。そうやって、もうずっとどんなことも納得するまで話し合って進めていく中での、タイトルがこれに落ち着いたということは、おっしゃってくださったように必然的な感じですね」

 
 

 
 

自分だけじゃ作れないっていうのが、みんなで作る理由


 

ーーThe Songbardsは作詞作曲とも、松原さん上野さんの共作という形を取られていますよね。楽曲に込める思いやメッセージは、どういう風にイメージを共有しているんですか?
 
松原「やっぱり最終的には1人で作ったように見せたいわけで、それができるようになるまで何度も話し合いをしました。バンドを結成する前も、結成してからも、いろんなことを話しながら2人で共作するのを失敗し続けてここまできたので、今は大体共有できていますね。例えば、最初に皓平が曲を一番まで作ってきて、僕がそこに書いてある歌詞がどういうものが解釈すると大体はもう合ってるんですよ。日頃話していることから、分かってるから。それが共作するにはまずスタートですよね」
 
 
ーー歌詞はセクションごとに考えるんですか?
 
上野「二人の貢献度が何%ずつかっていうのは曲によっても全然違います」
 
松原「一番極端な例だと、一度出した歌詞を2人ともが一通り全部書き直す。それを1行ずつ入れ替えるっていうのがひとつ。もうひとつ逆の極端な例では、どちらかが一曲丸々書いて、もう一方がそれを見て、『これでいい』って言うだけの曲もあるにはあります。けど、それも日頃から話していることの積み重ねなので、まあ共作だよなってところには落ち着けています」
 
 
ーーお二人が目指している歌詞表現というのはどういったものなのでしょうか?
 
松原「今の段階でできてるかっていうのは分からないですけど、いわゆる普通の社会の中で、普通に生きていたらわかる事とか気づく事を音楽にする必要性っていうのは、僕はあんまり感じていないんです。そういう音楽がすでにあって、それを好きなのは素晴らしいと思うし、僕も好きなものは好きなんですけど、例えば恋愛の歌詞で『ずっと君が好きだ』ってそれだけの歌詞を歌っていたとして、共感することはできるけど、それって別に友達との会話でも気付けることだと思うんですよね。もっと他の部分で、普通に生きていたら気付かない事や、もっと上手く生きたいと思っている人にとって必要な事こそを音楽にしたい。僕らも普通に生きてたら『こうした方がいいですよー』とか言うのは恥ずかしいし、怪しいですよね。なので、音楽という手段を使って、そういうことをお互い気付いていきたいなと思っています」
 
 
ーー上手く生きれない人とか生き方の提示という意味では、「グッドラック・ドリー」の最後のセクション〈君が愛より/熱くなった夢がこの世にあるなら/何が何でもしがみついて/振り払われてもっと進め〉のフレーズが思い出されます。
 
松原「前作までは僕たちもっと抽象的だったというか、なんとなく『人生ってこういうものだよね』っていう俯瞰的な感じのものを記録していたんですけど、フルアルバムで曲数があるんで、「グッドラック・ドリー」は具体的な要素も入れたらどうなるんだろうと書いてみた曲ですね。ただ、自分は何か答えを知っているわけではないし、迷うし、進めない時もあるんで、自分の心の中の整理と自分の後押しのために書いたんです。具体的なことを書くときは、たまたま本当に引っかかる人がいたらいいなと思っています」
 
 
ーーそういった機微な歌詞世界を共作として表現していくために、お互いに対して深い理解を持たれているんだと思うのですが、そんなお二人はお互いをどんな人間だと思いますか?
 
松原「皓平は色んなことをどっしり構えてるなっていうのは昔から思っていて、いわゆるアドバイスや注意はそんなに響いてなさそう(笑)」
 
上野「そんなことないよ(小声)」
 
松原「いや、それが悪い意味で響いたり惑わされる人もいる中で、あんまり被害的な感じはなく、若い頃からしっかり自分の芯を持っていて、それを育てることに集中して生きていけている人というイメージですね」
 
上野「ありがとうございます(小声)」
 
 
ーー上野さんは松原さんをどう思いますか?
 
上野「(松原は)責任感が強いですね。だからこそバンドのメンバーの中で、自分以外の誰かが何かあったり、ちょっとしたミスをしただけでも自分も同じくらい責任を感じてる。そういう部分は自分にはない側面だなと思います。あとは良くも悪くも正直で、良いものは良いし、良くないものは良くないって、そこは本当にはっきりしてるんで、信頼に値する部分ですね」
 
松原「性格は2人とも違うと思ってるんですよ。お互い嫌な部分もあると思うし、好きな部分もあるし、尊敬する部分もある。もし性格が似ていたら、ここまではやっていないだろうなとすごく思うんですよね。思想の向かう先がなんとなく似ていて、それでいて性格が違うのはよかったなと思います」
 
 
ーー異なる2人が合わさるからこそ、1人ずつでは生まれないものができるんですよね。
 
松原「そうですね。本当に2人で作る理由ってそれで、自分だけの作品だったらそんな大したことないって思ってるんですよ。それを壊してもらったり、メンバーも含め化学反応が起きるから、制作の段階でまず楽しい。自分だけじゃできないっていうのが、もうみんなで作る理由なんで、それがまだまだこれからだとは思うんですけど、ようやく形になり始めているかなと」

 
 
The Songbards_アーティスト写真
左から Ba./Cho.柴田淳史、Vo./Gt.上野皓平、Gt./Vo.松原有志、Dr./Cho.岩田栄秀

 
 

自分らしさは選択していく上で培われていく


 

ーーこれからリスナーの幅が広がっていく局面だと思いますが、今後目指していきたいビジョンがあれば教えてください。
 
上野「そうですね、やっぱり曲を作っていくことに関しては、自分だけで完結したくない気持ちはあります。曲を作り始めた最初の衝動っていうのは、自分がいいなと思ったものを反芻するためだったんですけど、今は聴いた人が少なからずそれに影響を受けて、何かよりよく生きるためのヒントに少しでもなれたら嬉しいなと思っています。それは聴く人が増えても変わらないですし、自分がやっていく中で一つの価値として、そういう価値のある歌詞や音楽を作り続けていけたらいいなと思っています」
 
松原「なんだろう……バンドが今までやってきた事や根幹に持っているもの、普遍性を、これからも変わらず大事にしたいなと思っています。でも、単純にそういうものを伝えたいとか広めたい、共有したいという気持ちと同時に、自分たちが楽しみたいという気持ちもあるので、サウンドや曲調はどんどん新しい事をしていきたいなと思っています。もしかしたら急にキーボードが入って、ギターが変な音鳴らしている日も来るかもしれないけど、この4人でやっているっていうのはずっとわかる状態でありたい。たとえいろんな場所でいろんな音が鳴っていても、こっちで弾いてるのは皓平のギターかなとか、今コーラス入ってきたのが柴っちゃん(ベースの柴田)かなっていうのはわかる規模でしばらくはやっていきたいと思っていて、その中でいろんな曲調やジャンルの曲に挑戦していきたいです」
 
 
ーー最後に、アルバムタイトルにちなんで質問なのですが、みなさんが何か大事な決断をする上で、複数の選択肢があったとしたら、何に重きを置いて選びますか?
 
上野「めちゃくちゃ大事なことじゃないですか」
 
松原「このアルアムを出したやつがなんていうか……」
 
(二人ともしばらく考えて)
 
松原「多分、自分の直感を信じてっていうのはもうしていないですね。自分がいろんなものを見たり経験してきた中で『好きだ』ってたどり着いたものはそれを信じてもいいと思うんですけど、分からない時っていうのは客観的な事とか人のためって考えて判断した方が合ってることが多いなって今回の制作を含めて感じています。あと、そうすると変に責任を感じなくて済むんですよ。僕はさっき皓平に言ってもらったみたいに、責任感が強くて、それに押しつぶされて苦しい時もある。でも自分で気付いてない良さにメンバーが気付いて、それを良いって言ってくれた。だからそれを信じていくっていうのはすごく気は楽なんですよね」
 
 
ーーでもそれは、その選択を委ねるに値する人の存在があってこそですよね。
 
松原「専門分野ってあると思うんですよね。それは別に技術的なことだけじゃなくても、とある経験をしてきた人、判断をたくさんしてきた人という意味でも。その専門分野の人が言ってくれたことは『それで行こう!』って思っていいと思う」
 
上野「僕は逆に、色々感覚的に決めてきていると思います。もちろん、考えないといけないことや、わからないことはちゃんと整理して選択していっているんですけど、自分らしさってそういう選択をしていく上で培われていくんだと思うんですよ。右と左があったとして、右を選んで、右を選んで、だから『自分っぽい』とか。だから、自分がどうなりたいかっていう憧れやビジョンが少なからずある中で、例えば一つ選択があったとしたら、どっちを選べば自分の目指してる方面に『っぽい』か、そういうことを考えて一つ一つ選択していけば、自分のなりたい人物像に近付けるのかなと思いますね」

 
 
 
 
▼リリース情報

1st Full Album『CHOOSE LIFE』(2019年11月20日発売)


TheSongbards_1stAL_desgin_0101.ストリートアレイ
02.悪魔のささやき
03.マジック
04.オデッセイ
05.Inner Lights
06.Life is But a Dream
07.Othello
08.グッドラック・ドリー
09.青の旅
10.春の香りに包まれて
11.風の吹くままに
12.この部屋で ※初回限定盤ボーナストラック
初回限定盤 CD+DVD ¥3,300(税別)VIZL-1664
通常盤 CD ¥2,700(税別)VICL-65263

 

▼ライブ情報
「CHOOSE LIFE Release Tour」
1月23日(木) 兵庫/神戸 VARIT.
w / KOTORI / おいしくるメロンパン
 
1月25日(土) 広島/広島 BACK BEAT
w / 2 / 空きっ腹に酒
 
1月26日(日) 熊本/熊本 B9.V2
w / 2 / 空きっ腹に酒
 
1月28日(火) 香川/高松 TOONICE
w / Brian the Sun / Slimcat
 
2月1日(土) 宮城/仙台 enn 2nd
w / The Cheserasera / No Buses
 
2月2日(日) 栃木/宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-4
w / Helsinki Lambda Club / ズーカラデル
 
2月9日(日) 京都/京都GROWLY
w / DENIMS / Easycome
 
2月11日(火) 石川/金沢 vanvan V4
w / DENIMS / MONO NO AWARE
 
【ワンマンツアー】
3月6日(金) 岡山/岡山 MO:GLA
3月7日(土) 福岡/福岡 DRUM SON
3月14日(土) 東京/渋谷 CLUB QUATTRO
3月20日(金) 愛知/名古屋 APOLLO BASE
3月28日(土) 大阪/梅田 Shangri-La

 
 
▼オフィシャルサイト
http://thesongbards.com

 
 
 
 
 
 


 
プロフィール画像岡部 瑞希●1992年生まれ、愛知県在住の会社員兼音楽ライター。名古屋の音楽情報サイト「しゃちほこロック」も運営。“自分の好きな自分でいる”をモットーと口実に、今宵もライブハウスへ。昂ぶる夜にピアノを叩き、3日に1回カレーを食べることで健やかな日々を送っています。Twitter:@momry1023