■ミスチル、東京ドーム公演を観た!「彼らの今が過去最高にエネルギーを放つ理由」『Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”』東京ドーム2日目ライブレポート

 

2019年5月20日(月)、平日の月曜日だというのに5万人が彼らを応援し彼らからエネルギーを貰いに水道橋へと集まっていました。会場メイン入り口前には話題のDJ警備員さんの誘導。「多くの方がここ東京ドームに集まっています、まさにCROSS ROAD、お足元お気を付けてゆっくりとお進み下さい」と言った具合に曲名や歌詞になぞらえてオーディエンスを会場へと誘う心意気にドーム周辺のムードは高まっていました。

 
 
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今回のツアーはニューアルバムを引っさげたアリーナツアー『重力と呼吸』からもう一歩踏み込んだ「次」を感じさせる構成で「死」や「別れ」といった全ての生命が背負うテーマをドームならではの壮大なスケール感でダイナミックに描きつつも、突き放すことなくひとりひとりにしっかりと寄り添うように届ける彼ららしさを存分に感じるライブでした。


彼らが大切にしてきた、している、していきたい部分が顕著に表現されており、共に歩んできたファンも感慨深いシーンが沢山あったことでしょう。タイトルの理由、何故そう感じたのかは、、、最後まで読んでね。

 
 
●最高峰の技術と情熱
 

開演時刻を10分押しての暗転(この瞬間はいつになっても興奮しますね)ギター・田原健一さんのアルペジオが鳴らされた瞬間、SEから始まることの多い今までのオープニングとの違いに特に田原さんファンは歓喜の雄叫びと拳を突き上げました(自分もその一人です)。ステージに設けられたいくつもの柱状巨大モニターがゆっくりと起き上がりながら様々な景色を映し出します。そのまま冒頭の「Your song」へ。この時点で今日までのバンドの歴史、そこに集まる人々の生活の中で音楽が鳴らされ、ひとつの場所でそれを共有している幸福感とが混ざり合いドーム一杯に広がります。


それぞれの環境、状況、事情、様々な形があるけれど、人間が本来持っているエネルギーをネガティヴもひっくるめてポジティブに変換し、内側から外側へと鳴らす、彼らの魂を最高峰のスタッフが拡張させ空間を支配していく様が手に取るように伝わってきました。いわゆるプロの仕業です。終始感動したのは広さや構造上タイムラグが生じてしまうドームクラスなのにめちゃくちゃ音が良いこと。全ての楽器のバランスと歌がしっかり聴こえ、音源作品と同じよう、それ以上に響かせてくれるPAさんに感謝をお伝えしたいです。


3曲目「himawari」のCメロ〈思いを飲み込む美学と自分を言いくるめて実際は面倒臭いことから逃げるようにして邪(よこしま)にただ生きてる〉というフレーズではボーカル・桜井和寿さんがカメラ越しにこちらを睨みつける眼光が凄すぎて吹き飛ばされるんじゃないかと思うほどの気迫。尾田栄一郎さん作『ONE PIECE』の主人公ルフィの覇気と重なります。


平成と共に駆け抜けたバンドが「平成のヒット曲を令和でも鳴らしたいと思います。もう一回、もう一回」というMCから届けられ「HANABI」の美しくも切なく強く淡い旋律はそれぞれの心にある言い表せない思いを魔法のように描き出すようでした。

 
 
 
●個人的ハイライト

個人的ハイライトはセンターステージのコーナーです。センターで披露された曲が優しく響いた理由の一つがドラムス・鈴木英哉さんがステージでは恐らく初となる電子ドラムでの演奏が生のドラムセットとは違う軽やかでタイトなニュアンスを与えてくれました。

 

弾き語りからビルドアップしバンドが加わっていくアレンジの「名もなき詩」2番Aメロでは4人が円になり対面しながら演奏、〈愛はきっと奪うでも 与えるでもなくて 気が付けばそこにあるもの〉という2番サビのキラーフレーズで客席へと向かい歌うという演出。今まで聴いたこの曲で最も優しく柔らかい体温を身に纏った演奏でした。


私がこの夜、最も心に響いたのは「CANDY」です。原曲ではアナログシンセやストリングスなど曲が壮大に展開していきますが、今回はオルガンから始まる聖歌的で女性的なアレンジ。曲の骨格、女性の身体で例えるならうなじや鎖骨、くびれのような美しい曲線のような音にやられました。(この曲について、詳しくはまたいつか…)


2000年の元日に歌詞が全て出来上がったというエピソードと共に届けられた「ロードムービー」。全ての曲が等しく大事だけど個人的に好きな歌詞がこの曲だそう。

 
 
 
●まとめ

冒頭でお伝えした「彼らの今が過去最高にエネルギーを放つ理由」、何がそうさせているのか。それは「時間」を受け入れて進んでいるからではないでしょうか。彼らの最近のライブでは「ここまでやってこれた幸せと、いつまで続けていられるかという終わりを意識しながら活動を続けている」という姿勢について語られます。


ツアータイトルについてのMCでは「『全ての重力に対峙していく』それぞれにとって対峙する重力があって、飛びたいと思っている人にとっては重力が、地に足を着けたいと願う人にとっては浮力が重力になる」という印象的な言葉も。対峙すべき重力のひとつが時間で、それを超えていけるのが音楽であり、愛であると言われたように感じました。


ラストに歌われた最新アルバムの最後に収録されている「皮膚呼吸」では〈自分探しに夢中でいられるような子どもじゃない〉というフレーズがあります。しかし最後の1行では〈また姿変えながら そう今日も自分を試すとき〉とも歌っています。大人になった子供達(直訳)が未だに葛藤しながら挑戦し続けている。そんな姿が懸命に日々を生きる人々の背中を押し、そんな観客からの声援が彼らを突き動かしているのでしょう。

 

ツアー終了と共に新曲のレコーディングの為にロンドンへと出向く彼ら。その音と出会う日まで、私たちもそれぞれにとっての重力と対峙していこうではないか!

 
 

 
 
 
 
 


 
FullSizeR-2高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
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