かっこよかったー! 楽しかったー! あちこちからあふれてくる声。高揚したファンたちが、幸せそうに話している。煌めきに包まれた、そんな終演後の光景が好きだ。ステージの興奮、感動を、心の中であたため、噛みしめながらの帰り道。一人でじっくり浸ったり、友だちとわいわい語り合ったり。彼らの想いは、ライブを通して、着実にファンへとつながれていく。私たちの想いもいつか彼らに届くことを願いながら。


1月からスタートしたMANNISH BOYS〈Vo./ G.斉藤和義さん × Vo. / Dr.中村達也さん〉のツアー“Naked~裸の逃亡者~”も、3月2日のZepp Nagoyaでセミファイナルを迎えていた。お揃いのデニムのジャンプスーツで登場した2人。赤いメッシュの達也さんと黒縁メガネをかけたオールバックの和義さんがたまらなくキュート。アルバム同様オープニングは2人だけのジャムセッション「裸の逃亡者」。続く「Sweet Hitch Hike」では、MANNISH BOYSのライブには欠かせないマルチプレイヤー堀江博久さん(Key.)が登場し、2人から放たれるごつごつとしたむき出しの音に、豊かな音色が華を添える。そして、ステージに呼び込まれたのは、ツアー後半から参加しているウエノコウジさん(Ba. / 現the HIATUS)だ。「今日はエレファントジェットシティでお送りします~」と和義さんに笑わされながら、元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのウエノさんと元BLANKEY JET CITYの達也さんが同じステージに立っている幸せを噛みしめていた。さぁ、かっこいい猛者たちのパーティーが始まる!

1

達也さんの豪快なカウントから始まる「Lemon」、「曲がれない」では、和義さんがまるで水を得た魚のようにしなやかにメロディーを刻み、達也さんと息の合った掛け合いを見せる。「天使とサボテン」、「レモネード」で伏し目がちにつま先立ちでギターを鳴らす姿は、沸き立つ色気にドキドキさせられた。そんな中、和義さんが映画『ボヘミアン・ラプソディ』を再現するシーンも。ステージの前に出てきて、「エーロ! エロエロ~」といつになく声を張って、拳を高く突き上げる姿にびっくり! 「エロ!」のコール&レスポンスに「All Right」とにんまりした和義さんは、今度はスタンドマイクを使って反り返り、あの有名なポーズ。フレディ降臨(笑)!? ロックな空間に、和義さんのぽわんとしたキャラクターが笑いを誘う。


また、ステージ上では「なーにー?」「どえりゃー」が飛び交う、ここは達也さんの地元・名古屋。だからか、いつにも増して、達也さんファンの男性の姿が多く見られた。歓声に埋もれてしまうようなファンの声を、達也さんが自ら拾って応えている姿を何度も目撃した。なんて優しい人なんだろうといつも胸が熱くなる。


THEE MICHELLE GUN ELEPHANTで、圧倒的な存在感を見せつけていたウエノさん。長身の、しなやかな佇まい。抜群のスタイルで、低い位置に構えたベースはまるで凶器のようでもあり、その低音の迫力たるや、さすがウエノ! 独特のオーラにゾクゾクさせられた。和義さんの話を、ベースを抱きかかえるようにして聞いている姿は、反則に思えるほどかっこよかった。堀江さんは、キーボードやベースのほか、今回はトランペットも披露。本当に才能に満ちた人なのだ。MCでは、和義さんが、堀江さんとウエノさんが同じthe HIATUSのメンバーだったこと、堀江さん脱退の理由やウエノさんにミッシェル解散の真相についても切り込んでいく。無邪気なふりをして、あえてステージ上で聞く、デリカシーのなさ。これも和義流(笑)。和義さんの人柄と、親しさゆえなのだろう。


そんなMCも挟みつつ、ライブは後半戦に突入。「I need somebody to love」は、自由度の高い、MANNISH BOYSらしい傑作。〈右手に黒 左手に白〉を、名古屋では〈右手にミッシェル 左手にフラカン〉(京都では、〈右手にkenken 左手に磔磔〉、舞妓さんとも言ってたっけ)とご当
地ものに変え、盛り上がる。さらに、調子に乗って、左手に〇〇〇と下ネタを言って喜んでいる姿はまるで小学生! かと思えば、スイッチが入ったように、ギターをかき鳴らす「赤い椅子」のかっこよさ。疾走感のある、エッジの効いたスリリングなシーンは、4人の魂や技の競演に目を奪われた。


アンコールでは、〈デニムじゃねぇ~ジーパンでしょう アウターじぇね~上着だろが上着〉と、延々アドリブを交えて掛け合いが続く「硝子の50代」が最高! ステージから、笑顔がこぼれている。なんて自由なんだろう。50代ってもっと大人だと思っていたのに、無防備に本気で楽しんでいるMANNISH BOYSは、眩しすぎて、まるで少年のようだった。ラストは「MANNISH BOYSのテーマ」。この曲が始まると、楽しさと終わってほしくない気持ちがせめぎ合う。和義さんが、ソロパートのラスト、達也さんに「もっともっと!」とばかりに、嬉しそうに指をくるくると回している。和義さんも同じ気持ちだったのだろうか。達也さんは、それに応えるように渾身のロングプレイを魅せる。それは、凄まじいほどにかっこよかった。


「We are マ! マ! マ! MANNISH BOYS!!!」


そう言って、口を真横に大きく開けてはにかんだ和義さん。身体をくねらせて、ちょっと誇らし気に。そして、ファンが精一杯伸ばした手にタッチをし、最後の最後までファンの声援にうなづきながら、会場を見渡していた。彼の目には一体どんな景色が見えていたのだろう。その視界のなかに一瞬でも入れたなら、こんな幸せなことはないと思う。


斉藤和義という人は、会えば会うほど、知れば知るほど(それは一部分であっても)、夢中になる。MANNISH BOYSとして、斉藤和義として、バンドで見せる顔、ソロで見せる顔…。まだまだ底を見せていない。次に弾き語りで会うときには、また私たちは、あっと驚かされるのかもしれないな。時折思うのだ。和義さんは、自分がかっこいいことに、実は気づいていないんじゃないかと。ひたむきにギターをかき鳴らしたと思えば、下ネタを言っては顔をくしゃっとしてはにかむ、そんな和義さんは誰よりも素敵で無敵なのだ。

 
2
 
 
 


 
 
 
F49CE500-1CD6-4E32-BBCB-69709B5402EBshino muramoto●京都市在住。雑誌編集・放送局広報を経て、現在は校閲をしたり文章を書いたり。現在NHKで放送されている『まんぷく』。実は、家族が勤めていたこともあり、子どものころからインスタントラーメンはいつも身近にありました。ドラマを見ながら、初めて知ったことも多く、驚きの連続。こんな飽くなき探求心の賜物だったんだなと、感慨深い想いです。。