「自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない。
簡単に、離れるわけないと思ってても、離れる時は、一瞬だ。
だから、ちゃんと大事に握ってて。君らは。絶対」

 
 
 
 
これは西川美和監督の映画『永い言い訳』の、本木雅弘さん演じる主人公・幸夫が、
母を亡くした真平にまるで自分に言い聞かせるように語るワンシーン。
幸夫の、というより幸夫を通して本木さん本人の魂の声を聞いたような気がして、
心に沁みた大切で大好きなシーンです。
ところで、西川監督ご自身の好きなシーンはどこだと思われますか?
昨年、京都のTOHOシネマズ二条で行われたティーチインで、
憧れの西川監督に直接ご質問させていただきました。
映画では小説で描けないところを表現したかったと真っ先に挙げられたのは夏の海のシーンと子どもたちのシーン。海辺で子どもたちと戯れる、亡くなった妻・夏子(深津絵里さん)の美しくも儚い笑顔。
劇中だけでなくその後も余韻として心を揺さぶり続ける印象深いシーンでした。
子どもたちのシーンは思い通りにいかないことが多く、
特に灯ちゃんを演じる5歳の玉季ちゃんは台本にはないセリフをしゃべり、
予測不可能な行動は「爆弾」のようだったそうです(笑)。
また幸夫が灯ちゃんを自転車で鏑木家まで送っていくシーンは
最初は入れる予定ではなかったけれど、
入れたことでこれからを未来を感じることができる、とても好きなシーンだと、
言葉を選びながらにこやかに答えてくださった西川監督。
とても聡明で可愛くて、どこか豪快で男らしくて。
私は幸夫に自分を投影してしまったこと、
私が文章を書いていることを告白すると「えっ? そうなんですか!」と
目を輝かせて満面の笑みでまっすぐに見てくださいました。
その凛としたかっこいい笑顔が私の背骨になっています。
 
 
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こんにちは。
4月からYUMECO RECORDSさんの連載陣として仲間入りさせていただきました
京都市在住の shino と申します。
第1回目の記事を見てくれた友だちや斉藤和義さんのファンの方々、 SNSやブログを通して知り合った方々からあたたかい声をかけていただきました。
嬉しくて冒頭の『永い言い訳』の言葉を噛みしめています。
いただいた言葉一つひとつが私のエネルギー源です。
 
さて、今回は4月23日(日)に梅田クラブクアトロで行われた加山雄三さん率いるTHE King ALL STARSとThe Birthdayの“ロックンロールのガチンコ対決”「KING ROCKERS VOL.2」に行ってきましたので、その様子をお伝えしたいと思います。
まず最初のステージはThe Birthdayから。
ダンサブルな「ROCK YOUR ANIMAL」からスタートすると
チバ(Vo/G.チバユウスケ)に応えるように観客は歌い腕を振り上げる。
その様子にチバがサングラス越しにニヤリとすると早くもフロアのテンションはMAX。
独特のベースプレイと横顔にいつも目を奪われるハルキ(Ba.ヒライハルキ)。
ウェーブヘアから汗が滴り落ちるさまも美しくて釘づけになる。
「SAKURA」 や「抱きしめたい」、新曲「1977」などを惜し気もなく盛り込んだ淀みないステージが続く。
大黒柱的存在のキュウちゃん(Dr.クハラカズユキ)からのアルバムとツアーの告知にフロアが湧くと、
チバが「いいねぇ」と口を開く。
そして「春、終わったね。…初夏だね」とチバワールドを展開。
フロアに「さすがにまだ早いんじゃ…」という空気が流れたことにも気づかずに(笑)。
新曲「24時…」ではハンドマイクで歌い踊るチバに対峙するかのような動きを見せるフジケン。
「踊るの?」と思ったら“ドスのきいた”変態性を詰め込んだギターが炸裂する。
ドヤ顔のフジケン。かっこいいんだけどなぜか笑みがこぼれる。
どこにいてもいじられキャラ、フジケンの人柄が垣間見える。
「くそったれの世界」ではマイクを観客に向け歌わせるチバ。
いつからだろう、こんなシーンが多くなった。
以前インタビューで「嬉しいかなと思って。俺も嬉しいし、みんな嬉しいしその方が楽しいかなと思って」と
言っていたチバ。
その言葉通りフロアは大合唱、振り上げる腕、そして幸せそうな顔。
みんながただ一心にチバを見つめていた。
まるで光の射す方、太陽に向かって手を伸ばすように。
まさにチバはロックスターなのだ。
 
 

 
 
そして、THE King ALL STARSのステージ。
古市コータローさん(ザ・コレクターズ)やウエノコウジさん(the HIATUS)、
武藤昭平さん(勝手にしやがれ)たちバンドメンバーがステージに現れると
その錚々たる顔ぶれにため息と歓声があがる。
百戦錬磨の大人たちの色気と熱気が漂うステージにいよいよ加山雄三さんが登場。
たちまちステージ上だけでなくフロアのみんなの顔がほころぶ。
加山さんの醸し出す空気感、オーラはまるで虹色の輝きを放つようだ。
強者たちが束になってかかってもそれを上回る存在感。
ダンディーで、ギターを持つとたちまち人懐っこい笑顔の加山さんと
そんな加山さんに絡んでいくメンバーの嬉しそうな顔が微笑ましい。
THE King ALL STARSの曲だけでなく、加山さんの代表曲「君といつまでも」なども
披露されたステージは、穏やかで華やかな極上のときだった。
私たち観客もロック界の大御所たちも“スター”加山さんの手のひらの上なのかもしれません。
 
 
 
 


 
shinomuramotoshino muramoto●京都市在住。雑誌編集・放送局広報を経て、現在は校正士、時々物書き。元ミッシェル・ガン・エレファントの3人(チバ、キュウちゃん、ウエノ)が同じステージに立つことを楽しみにしていた「KING ROCKERS」。時間は確実に流れていることを実感…感慨深い夜でした。