11月1日 幼稚園の面接。朝から雨。面接の時間が願書を提出した時点でないとわからないので、3つの園の願書を用意していて、最低でも2つは受けられたらいいなと思っていた。熱心な教育で人気の高いA園(本命)と、最寄り駅前にあってアクセスの良いB園(すべり止め)、のびのびしていて預かり保育なども充実のC園(すべり止め)。しかし手違いがあって、3つの園の面接時間がどれも10時半にかぶってしまうという事態が発生。もうその時点で目の前が真っ暗になりワナワナと体中から力が抜けるような感覚(これぞ絶望感)がした。全ての園の説明会に行き、願書をもらって書いて、お金を払って、面接時間がなるべくかぶらないようにと何度もシュミレーションしてきたこの日々の労力が……!と思ったけど、少しでもこの状況が良くなるように落ち着かなくてはいけない。そう、これは私の人生ではなくて彼女の人生なのだと心に言い聞かせる。旦那にC園の面接時間をずらしてもらうようにお願いし(その時点で併願であることがバレバレなのだが開き直る)、何とかA園とC園のふたつに面接に行く。園長先生とのお話、娘はこっちがびっくりするほど普段以上のトーク力を発揮していた。そしてこの日のうちに、両方の園から合格が知らされた。ちなみにA園の園長先生がGOING UNDER GROUND好きだということが発覚。
 
 
園長「お父さんのお仕事は……『音楽と人』、ですか? 雑誌ですよね。僕、読んだことあります」
私「そうなんですか。主人が編集をしておりまして、私も文章を書いたりしています」
園長「ちなみにお父さんとお母さん、おふたりとも好きなバンドとかって何かあります?」
 
と聞かれて、「え〜っと……」としばし考えた後、「GOING UNDER GROUNDとかですかね……ご存知ですか?」と返すと「わ〜、僕、大好きなんですよ。泣き虫ロック!!」と言うので、何だか笑ってしまった。幼稚園の面接で「泣き虫ロック」というワードが出ることはなかなかないだろう(笑)。何はともあれ幼稚園が決まって良かった。ゴーイング好きの園長先生がいるA園に行くことにした。
 
 

 
 
11月2日 新宿でひとり焼肉ランチ(昨日の打ち上げの気分で)。
 
 
11月3日 文化の日。友達親子と一緒に公園で遊ぶ。秋晴れで気持ち良い。
 
 
11月4日 同窓会の司会原稿を書く。母校の同窓会の関東支部の幹事になってしまい、その開催が目前に迫っている。先生方やシスター(母校はカトリックなので)をお招きしていて、シスターに事前に電話インタヴューして司会原稿に近況を盛り込む、という作業をしているのだけれど(ほとんど本業!)、修道院で暮らすシスターたちは携帯電話を持ってないし、なかなかつかまらない。だけど、ひとりひとりに興味を持って話を聞くと、とても面白かった。高校生の時なんかは、私は悪目立ちしてよく怒られていたし、シスターたちのことを毛嫌いしていたけど、それはきっと、「先生」や「シスター」というひとくくりにしてちゃんとひとりひとりに興味を持って接していなかったからだと思う。質素に暮して、お祈りをして、ひっそりと誰かの役に立つことをして、そうやって過ごすシスターたちの穏やかで優しい日々に少し触れることが出来た気がする。
 
 
11月5日 「キリンが見たい!」という娘と多摩動物公園。夜は六本木でライヴ。
 
 
11月6日 同窓会の打ち合わせ。娘を修道院の会議室に同行させて2〜3時間、当然のことながら子供は途中で飽きちゃうので、いつも悪いなあと思う。開催まで一週間、ここにきて様々な問題が山積みになってくる。
 
 
11月7日 朝から幼稚園の入園手続きを済ませ、音大の取材で仙川に行き、その後は渋谷でSout it Outの取材。先日のライヴで思うところがあって山内くんに「お母さんは音楽好きな人?」と聞いてみたら、やっぱりそうだった。80年代や90年代の日本の歌謡曲やロックも聴いて育ってるから、彼らと同世代の20代の子たちだけじゃなくて、例えば30代〜40代の人が聴いても魅了されるような、そんな歌を歌う人だ。言葉が真っ直ぐに届いてくる声と、独特の歌いまわしみたいなものを持っている。あと、ステージ上での佇まいね。決して派手なキャラではないけど、すごく存在感がある。
 
 

 
 
11月8日 朝、テレビをつけたら博多駅前が陥没していた。本当に目を疑うようなすごい光景だった。作業をしていた人にも一般市民にも怪我人とかいなくて良かった。私の父は、地下を掘って水が出たところを止めるような(いわゆる土木とか防水の)仕事をしているので、こういうニュースを見るたびに他人事じゃない気持ちになる。
 
 
11月11日 世武裕子さんの取材。朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』の音楽も手がけている彼女。映画音楽家を志し、今や月9ドラマなどの音楽も手がける売れっ子でありながら、シンガーソングライターとしても活動をする。そのバイタリティと根っこにある反骨精神に触れることができたお話で、とても刺激的だった。そのお次はパスピエの取材。成田ハネダくんも、大胡田なつきさんも、お会いするととても落ち着いた大人の雰囲気がするし、それぞれのクリエイティヴィティを信頼し合いながら発揮してひとつの音楽を生み出している感じがとても頼もしい。私がパスピエの取材を担当するようになったのは今年になってからのことなのだけど、成田ハネダくんに最初に会ったのは、彼がまだ音大時代のことだった。学祭のジャズバンドの中で、大きな手でワシワシとカッコいいピアノを弾いていて、ひときわ目立っていたのが彼だ。「僕、バンドもやってるんですよ!」「いつか取材してください!」と熱く語っていた。それから、パスピエとしての初ライブも観させてもらってから何年か後にデビューして、取材をする機会はなかったけれど彼らがどんどん大きくなっていくのを遠巻きに見ていた。そしてようやく今年の夏に初めて取材現場で会うことができて、成田くんに「最初に会った時から何年経った?」と聞いたら「もう10年です!」だって。月日が経つのは早いねえ。そして頑張ったね。パスピエは今年でデビュー5周年。狂騒の季節の中を、しっかりと駆け抜けている。
 
 

 
 

 
 
11月12日 同窓会の前日の夜は会場設営、当日も朝が早いから旦那に娘をお願いねと言っていたのだけれど、旦那に出張がはいってしまった。しかし幸運なことに出張先が福岡だったので、娘を連れて行って、ばあばに遊んでもらってたらいいんじゃない? ということになりました。というわけで娘と旦那は、初めての父娘ふたり旅。ちなみに福岡空港に到着するなり、車で迎えに来てくれていた私の父が有無を言わさず博多駅前の陥没を見に連れて行ってくれたそうです。野次馬! そして私は同窓会の前日、幹事のみんなと百数十人分のテーブルと椅子を、あーでもないこーでもないと言いながら並べたり動かしたり。帰宅後は深夜まで席次表の校正をみんなでがんばり、朝は5時起きで出発。子育ても仕事もしているメンバーがほとんどなので、ハードさ極まりない。
 
 
11月13日 同窓会当日。同窓会の前にお祈りの会というのがあり、それも担当だったので、聖書の朗読などをする。私の人生で、聖書朗読は最初で最後のことだろうと思う。でも上手に読めた気がする! 坂本真綾さんになった気分で読もうと決めていた! あんな美声だったら良いのになあと思った。うん、たぶんそういう気持ちでやるものじゃないと思うよ聖書朗読。それから同窓会では司会の側で進行を手伝ったり、撮影をしたり、BGMを流したり、色々。夕方には眠すぎて、終わってからみんなお茶しに行くと言っていたけれどパスして新宿TSUTAYAでCDを返却して帰宅。
 
 
11月14日 疲れてマッサージに行く。
 
 
11月16日 娘の保育園の散歩参加という行事で2時間がっつり歩き、公園で紅葉を楽しむ。その後は、スキマスイッチの取材。奥田民生さんがプロデュースした「全力少年」のお話など。ひさしぶりにふたり揃ってのインタビューだったけど、とても和やかな雰囲気だった。今年のスキマスイッチは、カバーライブや誰かにプロデュースを託すなど、これまでとは違った活動を主軸にしていた。そういうチャレンジの中で、あらためて音楽への愛情を確かめたり、またみんなに音楽の素晴らしさを伝えたり、自分たちが作ってきた音楽の新たな魅力を見出したりしてきたんだと思う。当たり前に繰り返していることを、一度見直して、新しい風や流れを生み出すことは大事だ。私は彼らと同世代でもあるので、そういうことが必要な時期もあるということもわかるし、だけど実際にそこに踏み出すことにはとても大きなエネルギーや覚悟がいることもわかる。いつだって半端な気持ちでやってないからスキマスイッチの活動はファンにちゃんと伝わっている。
 
 

 
 
11月19日 七五三。朝から着付けをして美容院に行って、友達のカメラマンも合流して神社へ。義母が娘の着物を3パターンも用意してくれていて、でも着慣れない着物や草履を嫌がったらどうしようと思っていたのだけれど「お姫様みたいだねー」と褒めちぎると嬉しかったみたいで機嫌よく着てくれた。なので途中で着物を着替えたりして2パターン撮影。イチョウの黄色い絨毯と、赤い着物がとても綺麗な写真を撮ってもらいました。幼稚園面接、同窓会、七五三と続いた怒涛の行事ラッシュがこれにて終了。
 
 
11月21日 娘を連れて幼稚園に行き、制服の採寸。何の変哲もない紺色のブレザーに、愛想のない角ばった襟の白いブラウス、グレーの吊りスカート。すんごい地味だったよ制服……。冬のジャージ上下だけが唯一、似合っていた気がする。
 
 
11月22日 ヒグチアイさん取材。クラシックピアノから合唱団や声楽、そしてジャズと、色んな音楽遍歴を持ちながら、ピアノを武器にシンガーソングライターという道を選んだ彼女。人と分かり合えない孤独や、好きな人と気持ちがすれ違っていく恋の終わりの虚しさなど、描かれている感情は生々しいものだけれど、奏でられるピアノがさらなるエモーションを添えるというよりも時にユーモラスに軽やかに音楽を彩っているところが素敵だと思う。自分のひねくれている部分も自覚しながら柔らかな笑顔を見せる、とてもチャーミングな方だった。
 
 

 
 
11月24日 朝倉さやさん取材。今年2回目。音楽プロデューサーのSolayaさんにもお会い出来た。
 
 

 
 
11月26日 パスピエ取材。今回はアルバム『&DNA』完成記念でメンバー全員インタビュー。空き時間があったので成田くんに、もうすぐ3歳になる娘にピアノを習わせたいんだけどという相談をしたりする。やっぱり電子ピアノじゃダメかなあ……。
 
 
11月28日 急性胃腸炎になるーーはい、忙しかった11月の〆はコレでした(泣)。娘が保育園でもらってきたウイルス性のもので、娘の2日後に私が、その2日後に旦那が体調悪くなるという、去年と全く同じパターン。この地獄の胃腸炎リレーはいつも娘の症状が一番軽くて、速攻で驚異の回復力を見せるというのが救い。そして旦那が一番長く引きずっています。私はもう年末の強制デトックスだと思うことにしました。子供ってやっぱり保育園や幼稚園といった集団生活の中で流行り病にかかりがちなので、小さい子がいる家庭は冬になると大変ですよね。うちも毎年恒例化しそうな予感! やめて!
 
 
 
 
 
 


 
FullSizeRender-300x225上野三樹●YUMECO RECORDS主宰 / 音楽ライター / 福岡県出身。