あくまで、自然体。
必要以上に自分をよく見せようとしない。
インタビューでも自分のことなのに、へぇ~とか感心しながら聞く人。
現在、自身最長最多の65本にわたる全国ツアー真っ只中の斉藤和義さん。
ツアータイトルでもあるアルバム『風の果てまで』を核としたセットリスト。
昨年の暮れに約10年越しのライブが叶ったチャーリー・ドレイトンと作ったこのアルバム。
ロスでのレコーディングということもあり、並々ならぬ想いがある。
 

18th Album『風の果てまで』

18th Album『風の果てまで』


 
ライブがやりたくて曲を作っているようなものという言葉通り
ライブへの想いは熱く深い。
いつもファンの反応が気になるというぽわんとした印象から、
ステージに上がりギターを持ったとたん、その穏やかな佇まいは異彩を放つ。
歌やギターは彼にとって “背骨”のようなものなのかもしれない。
眩しいほどのライトを浴びて、猫背の背中がしゃんと伸びる瞬間。
私たちは彼に釘づけになる。
 
また、このツアーではドラムの豊夢くん以外は初のメンバー。
新メンバーでゼロからバンドをつくり、カタチにしていくことは
楽しみでもあり、チャレンジだったのだと思う。
ツアーがスタートして間もないころ、私が感じた違和感。
ぎこちなさと個々のメンバーが自分の立ち位置を探っている感じが
もどかしかった。でもこれもライブの醍醐味。
その日その瞬間にしか味わえない空気。
 
それが明らかに変わってきている。
 
「ツアーをやっててバンドが本当にノッてきてる時って、
みんながひとつの船に乗って同じところを旅するような感じになるんですよ」
 
ステージ上の彼らが一体になる瞬間が見えた。
そして私たちもぐいぐい巻き込まれていく。
 
また、アコギ1本でファンを魅了するのもいい。
みんなが聴き洩らさないよう、息をのむように耳を澄ましているのがわかる。
その優しい歌声とギターが心に沁みてじわじわ広がっていく幸せ。
いつも思うのだ。こんな贅沢な時間をありがとう。
長年のファンにも、初めて足を運ぶファンにも
余すことなく等身大の “斉藤和義” が届いている。
 
LIVE中のMCにも全く気負ったところがない。
ごくごくフツウの会話。
時事(芸能)ネタを盛り込み、
そして“せっちゃん”お得意の下ネタもちゃっかり織り交ぜながら
ファンとの距離感を楽しんでいる。
多彩なバックグラウンドを持つバンドメンバーの紹介を兼ねて
その土地に関わる話を引き出したり、下ネタを振ってみたり、うまく逃げられたり(笑)。
“斉藤和義” のライブの魅力は、そんなところにもある。
 
以前、某番組で40歳を過ぎてからのブレイクについて聞かれ
「ずっと頑張ってたよと思うし、あなたが知らなかっただけでしょ」
 
柔らかい物言いのなかに見え隠れする、骨太な男らしさ。
決して2枚目ではないけれど、そこはかとなく漂う色気。
これは彼が20代の頃から変わっていない。
むしろ、年々その魅力は増しているといっていいだろう。
今年50歳を迎える “斉藤和義” 。
『風の果てまで』はこの年齢だからこその説得力。
一層胸に深く響いてくる。まさに最強なのだ。
 
最近ますます増えてきた男性の野太い声援に
「男は黙っててください~」と軽くあしらいながら
嬉しそうに笑っていることも、
わざと男性にピックを投げていることも、私は知っている。
また、かっこよくギターをかき鳴らしたかと思えば
ピックが思うように飛ばず苦笑いする姿も。
そして、バンドメンバーとのやりとりを見ながら
しみじみ思う。愛されているなぁと。
 
今日も “斉藤和義” はどこかの街でステージに立ち、進化し続けている。
そして、5月には大阪城ホールと日本武道館でクライマックスを迎える。
最終日の6月まで60本以上を駆け抜けてきたその先に、彼らはどんな景色を見るのだろう。
私たちもその光景を体感し、この目で見届けたいと思う。
 

 
 
 
 


 
IMG_20160129_210203shino muramoto●雑誌編集、放送局広報を経て、現在は校正士時々物書きやってます。斉藤和義さんが好き。GRAPEVINE、アベフトシ、The Birthday…お馬さん、向井理くん、パン、本、香り、言葉、深キョン、警察24時。それからメモ魔、欲張り(笑)。“偶然”は、実は”必然”。そんないくつもの瞬間を積み重ねて今がある。そして、想いは、目には見えないけどちゃんと誰かの心に届いている。そんなことを日々感じています。