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こんにちは、藤田竜史です。
 
YUMECO RECORDS連載【夢力】と書いて“ムヂカラ”、第9回目の投稿は特別編。来たる11月25日にリリースされますホタルライトヒルズバンドのNew Album『hello my messenger』の発売に先駆けまして、この作品のプロデューサーである片寄明人さん(GREAT3)と バンドのツインボーカル藤田竜史&村上友香によるスペシャル対談をお届けします。インタビュアーはもちろん、YUMECO RECORDSの上野三樹さんです。
 
すでに終了していたアルバムレコーディング後、またこうしてプロデューサー片寄さんとじっくり語り合う機会を持てたことは僕にとって本当に貴重な体験でした。音楽人生の中でも、この先ずっと輝き続けるであろう、今作品と向き合っていた“あの時間”の制作秘話や気持ちが余すことなくこのインタビューには詰まってます。
 
じっくりと、どうぞ。
 
(取材・文=上野三樹 撮影=上山陽介)
 
 
 

「色んなところに限界を感じてたし、更に壁を突き破りたいという想いがあった。そんな時にプロデューサーとして片寄さんの名前が挙がって」(藤田)


 
ホタルライトヒルズバンド/村上友香(ボーカル・アコースティックギター)藤田竜史(ボーカル・ピアノ)

ホタルライトヒルズバンド/村上友香(ボーカル・アコースティックギター)藤田竜史(ボーカル・ピアノ)

――ホタバンは今年の夏はSUMMER SONIC 2015の「出れんの!?サマソニ!?」に選出されて出演したりと精力的な活動だったと思うんですけど。そもそも今回のアルバムはどんな作品にしようと思って始まったものだったんですか。
 
藤田「結構、セッション自体は早くから始まっていて。片寄さんとは2014年の7月に〈飛行船ミミ〉という曲からレコーディングがスタートして」
 
片寄「そうだね。もう1年以上経つのか。ほんとは去年、(アルバムが)出るはずだったんだよね(笑)」
 
藤田「そこから色々あったんですけど(笑)。僕らは2014年の6月に前作『ホタルライトヒルズバンド3』というアルバムを出して。その少し前くらいから、もう新曲を作り始めて作品を作ろうという動きがあったんです。ちょうど同時期にプロデューサーとして片寄さんの名前が挙がって、そこから僕らもお会いしてスタジオに入ったりし始めたんですけど途中でレコーディングが中断して」
 
片寄「2曲仕上げて、まだ続きがあるよとは聞いてたんだけど。再び始まったのが1年後だったっていう(笑)」
 
藤田「その間、バンドとしてもリスタートしなきゃいけない時期で。紆余曲折ありつつも、何とかまた片寄さんと一緒に制作出来るようにって思っていました」
 
――そもそも片寄さんをプロデューサーに迎えて制作したいというのはどういう気持ちからだったんですか。
 
藤田「僕らからプロデューサーの方と一緒にやりたいっていう発想はなかったんですけど、でもアルバム3枚作って色んなところに限界を感じてたし、更に壁を突き破りたいっていうところから身の回りの人たちと話をして、片寄さんの名前が挙がって。全然予期してなかったことだったんで、どうなるか想像が出来なかったんだけど、〈片寄さんはバンドごと成長させてくれる人だよ〉っていう話を聞いて。そういう意味では自分たちの状況にマッチングしてるし、是非お願いしたいですっていうことで」
 
――ホタバンからのオファーを受けて片寄さんはいかがでしたか?
 
片寄「バンドのプロデュースをする場合は、自分もバンドマンなので、自分の色に染め上げるとかそういうことは一切考えてないんですね。色んなタイプのプロデューサーがいてそれぞれのやり方があるけど。僕の場合はバンドの一番いいところを明確にして、とにかくそこを伸ばす。欠点は後からどうにでもできる。だからバンドによってやり方は全然違うんだけどね。そのやり方がホタバンにも上手くハマった気がします。やっぱり1年空いたこともあって、バンドとしても固まったよね。今でこそ藤田くんは鍵盤のイメージが強いけど、最初はやっぱりギターを弾きながら歌うイメージだったし」
 
藤田「そうですね。鍵盤にシフトし始めたばかりの時期でした」
 
片寄「色んな方向性だったりバンド内の関係も、今年になってもう一度みんなとスタジオに入った時に、1年前よりもずっと風通しも、状況も良いなって感じましたね。プロデュースの話をいただいた時に、とても正統的な楽曲という印象を受けて、それが逆に新鮮だなと思ったんです。ここまでストレートにいい曲、いい歌、いい声で、珍しいくらいに奇をてらってないっていうのかな。だけど話してみると、藤田くんなんかすごい音楽マニアで、色んな音楽を知っていながら、あえてこういう王道の音楽をやるんだっていうところも面白かったし。そこは僕もGREAT3というバンドをやっていて、マニアックなバンドって言われがちなんですけど(笑)、でもここまでやってこれたのはメロディの良さだと思っていて。いいメロディが好きで、聴くのも好きで。ホタバンとはそういうところに自分と接点があったんですよね。これは何か、いいものが出来るんじゃないかなと最初に思いましたね」
 
――友香さんは、プロデューサーに片寄さんを迎えて制作することをどう感じていましたか?
 
友香「最初はどういう感じになるか全然わからなくて、未知な感じだったんですけど(笑)。でもやってみると、自分たちをすごく良くしてくれるし、やりやすくて。私は結構、褒められて伸びるっていうか(笑)、〈そこはダメでしょ〉って言われるといじけちゃってレコーディングとかでも〈もう嫌だ〉って感じになっちゃってたんだけど。上手く動かしてくれたというか。自分的には一緒にやらせてもらってすごく良かったですね」
 
 

「今は1回のチャンスを逃したら先が無いかもしれないじゃない? だからこそプロデューサーとして関わるのも、責任を感じます」(片寄)


 
片寄明人(GREAT3)

片寄明人(GREAT3)

――プロデュースをする際はまずそのバンドを知るっていうところから始まるんですか。
 
片寄「そうだね。とにかく、どこが魅力かなって探すのはプロデュースの第一作業で。ホタバンの場合はメロディであり、2人の声。そこにフォーカスを絞ろうと思いました。バンドはメンバーそれぞれ個性的で実力もあるんだけど、みんな揃って〈歌を生かそう〉っていうアプローチをしているメンバーたちだったし。そういう意味では魅力を一本化する作業はバンドの中でもある程度、出来ていたので。後はそれを、インディーズだし限られた時間しかない中で、さっき友香ちゃんが〈褒められると伸びる〉って言ってたけど(笑)、短い時間の中で最高のパフォーマンスを引き出すことが、バンドのプロデュースにおいては一番大切なところだと思うんです。ホタバンはとにかく曲がいっぱいあったんだよね。俺、最初にもらった時、100曲はいかなかったと思うけど」
 
藤田「スタジオで録音したすごい荒いデモとかも全部聴いてくださって」
 
片寄「聴くだけで何日かかかるくらいの量があってね」
 
藤田「最初にいっぱい送った曲たちに対して〈この曲はここが良いと思う〉みたいに片寄さんが全部コメントをくださって。遊びの感じで作ったものに対しても本気でコメントしてくださったから、僕ら何だか申し訳なかった(笑)」
 
片寄「やっぱりね、遊びの中に光るメロディがあったりすることは自分の曲でもあるからね。でもこれだけの曲数が書けるソングライターはなかなかいないと思うから。それはすごくいいアドバンテージだと思いますよ」
 
――最初に一緒にレコーディングした「飛行船ミミ」は片寄さんがFacebookで書いた文章に、藤田くんがインスパイアされた部分もあるとか?
 
藤田「そうなんですよ。フジファブリックのことを書いた文章だったんですけど。やっぱりすごく思うことがあって。単純に思ったのは、ほんとに限られた時間の中で何の保証もない中で音楽をやるわけだから、そういうことも含めて曲のイメージが沸いてきて。まずはそこからかな」
 
片寄「自分も含めて、いつ命が尽きるかもわからないし。音楽の世界は昔だったら一度レコード会社が決まれば3枚はアルバムが出せたから、冒険したり迷ったりする時間もあったけど。今は1回のチャンスを逃したら先が無いかもしれないじゃない? 音楽家としての生命も含めてだけど、やっぱりその瞬間にどれだけ全てを出せるのか? っていうことをより問われる時代になってるような気はしますよね。だからこそプロデューサーとして関わるのも、責任を感じます。その1回のチャンスを自分のせいで無駄にしてしまったら、と考えると、やっぱり100曲近いデモも聴かなきゃいけないなと(笑)」
 
――なるほど。風通しが良くなったとさっき片寄さんはおっしゃいましたが、私もこのアルバムを聴いてすごくそこは感じたんです。「飛行船ミミ」にしても、こういうテーマの曲だったら、もうちょっとシリアスな印象のものになったりするのかなと。でもそうじゃなくて。
 
藤田「〈飛行船ミミ〉に関しては、まずメロディがあって、浮かんできた言葉がこれだったんですね。だからもともと曲が持ってるエネルギーがポジティヴだったのかなと思うんですけど。片寄さんと一緒にやるんだっていうことを僕の中でも意識しながら書いた曲なので、今までの自分にはなかったような何かが入ってきて。でも最初はピアノで弾き語りで寂しく作るんですけど風通しをくれるのはバンドの音なんですよね」
 
友香「私もこの曲は初めて聴いた時からいいなと思ってて。言葉が自分の声で綺麗に出る感じがしていて、歌いやすくて」
 
――そこが聴いた時の軽やかさにも繋がってるんですかね。歌詞そのものは〈明日を願う時間はないんだ〉とか〈タイムリミットは迫ってる〉という切迫感のあるもので。これまでホタバンが歌ってこなかったことだと思うんですけど。
 
藤田「そうですね、全く歌ってこなかった部分です。むしろ〈ずっと続いて行けばいいな〉というような真逆のことを歌ってたと思うんです。それが自然と逆転したけど、でも曲はポジティヴっていうところに落ち着いたのかな」
 
片寄「ネガティヴな部分とポジティヴな部分、両方あるのが人間だと思うし、〈タイムリミット〉という言葉も、それだけだったら重たい話かもしれないけど、でも全員が今、一瞬一瞬を死に向かってカウントダウンしてることは間違いなくて。生きる上でひとつだけ共通の真理があるとすればそこじゃないですか。だけどみんなそこで夢を見たり希望を見たりするのが人間なので、相反する要素が同時入ってる表現がリアルに感じるし好きなんですよね。僕はホタバンが持つ声にもちょっとそれを感じていて。スタッフから聞いていた話と、僕が感じた2人の声の印象というのが間逆だったんですよ。友香ちゃんは母のように明るく大らかな声で包み込み、藤田くんはちょっとナイーヴな文学少年を思わせるような声だって聞いてたんです」
 
――これまでのホタバンのイメージだとそうですよね。
 
片寄「でも自分が聴いた印象としては逆で友香ちゃんの声は翳りがあって、日本人の琴線に触れるいい意味での湿り気があるというか、歌謡曲的な歌を唄ってもきっと合いそうな哀しみを内包した声だって感じて。藤田くんの声からは、考えてることは文学的なんだけど声自体は素直で太陽の陽射しのように明るい印象があって。違う個性を持つ声の2人が一緒に歌うことで、言葉そのものは普遍的でも、独自な魅力や説得力が増してくるだろうなという予感があったんだよね。だから〈飛行船ミミ〉がミディアム・バラードにならずにパワフルな印象になって、まるっきり正反対とは言わないけど違うベクトルの要素が入り混じりつつ成立したのもそう、僕はそういう作品こそが良いものになる条件のような気もするんだよね」
 
 

「ビートルズもビーチ・ボーイズもイーグルスとかもそうだよね、それぞれにすごいシンガーが複数いてそれぞれが合わさった時のバンドの声みたいなものがあるグループっていうのは強いと思う」(片寄)


 
151001_YK_00084――なるほど。2人の声の役割を明確にしたことは今回の作品においてすごく重要なことだったと思うんですが。
 
片寄「それは今後のバンドの見え方や歌詞の書き方にも影響してくるんじゃないかなと思いました。自分が参加したことで、そうした良いフィードバックをホタバンに与えられたのだとすれば何より嬉しいことだと思います」
 
藤田「2人でハモることでひとつの声にしよう、ってことを今までしてきたんです。2人の声を合わせることで光を生み出すというか。男女ボーカルだから〈何してるの?〉〈元気だよ!〉みたいな掛け合いをしないの? とかってよく言われるんですけど、そうじゃなくて俺らは2人でひとりの人間を歌えたらカッコイイよなって思ってきて。でも、ここにきてまたあらためて、お互いの声が持ってるものを再確認した上で、またハモることができて、また新しく響いたというか。もちろんそれを意識しながら曲を書いたし、ここから更に突き詰められるなっていう感じがしますね」
 
――友香ちゃんの持ってる声のアンニュイさと、藤田くんの持ってる明るく突き抜ける声、その両方があるから聴いててハッとさせられる部分があるというか。前までは曲によって2人の役割が変わっていたこともあったし、藤田くん自身も「もうひとりの自分と一緒に唄ってるような感覚」と言ってたこともありましたが。でも今作においては違いますよね。
 
藤田「うん、全然違いますね。俺がメインで歌う時は友香はコーラス、という感じでやってたけど。今はもうメインもコーラスもなく、2人の声が鳴ってる。そういうイメージをちゃんと持ててるから。友香はこのアルバムが今までで一番歌っています」
 
片寄「いいバンドって、ビートルズもビーチ・ボーイズもイーグルスとか伝説的なバンドでもそうだよね、それぞれにすごいシンガーが複数いて、その声が合わさった時だけに生まれるバンドの声。それがあるグループっていうのは強いと思うし、混声の醍醐味だと思う。それがホタバンの2人の声が合わさった瞬間にもあると思うから。僕はそれを音の面でもより演出したかったんですよね」
 
――片寄さんはChocolat&Akitoもそうですし、古くはロッテンハッツから男女ボーカルのスタイルで音楽をされてきてますよね。
 
片寄「やっぱりそういうスタイルには昔から惹かれますね。もちろん別々にも唄えるんだけど合わさった時にしか生まれない特別なマジックっていうのかな。それをみんなに伝えたいですね。特に男女のボーカリストの場合、使える音域の幅が格段に広がるから、自分ひとりじゃ歌えないメロディを書けるし。ホタバンの場合、友香ちゃんも女々した、藤田くんも男々した声ではないので、あんまり男女ということは意識しなかったけど、ひとりよりもふたりで歌うことで強くなるやり方は常に考えてたかな」
 
――最初に2曲が出来て、その時点で声のポジショニングがはっきりしたんですね。
 
藤田「それがわかったからこそ逆に、その先のハードルが上がったっていうのもあって。それで1年空いたっていうのは妥当だったかなと」
 
――大きな変革期だったんですね。
 
藤田「今までの曲は俺が歌ってる部分が多かったし、もっと友香の声が聴きたいっていうお客さんもたくさんいたりして、じゃあどうすればいいのかっていうことに対して、色んなことが一気にアイデアとしてあったので、それを整理するのに時間がかかりました。でもライヴで少しずつやりながら、僕が弾くピアノを主体にしてやろうってなったもの大きな変化だったし、そこでもすごい変わったよね」
 
友香「うん、変わった」
 
――1年空いたというのはそういう時間だったんですね。制作が再開して1曲目の「hello hello」も生まれて。
 
片寄「これはもうレコーディング直前に出来たんだよね。久しぶりのミーティングでまた作業を再開する時に、〈出だしでいきなり2人でハモる曲が欲しい〉ってリクエストした記憶がある」
 
藤田「それも考えながら、ギリギリまで悩んで最後に出来た曲です」
 
 

「私は結構あんまり何も考えてないことが多くて」(友香)

「そのバランスがいいよね。藤田くんはすごい考えるタイプだから」(片寄)


 
151001_YK_00128――友香さんがメインで作られた「ロンリーレイニーデイ」も収録されています。憂いのある声とか歌詞の世界観とか普段の友香ちゃんに近いものだったりするのかなと思うんですが。これまで以上にパーソナルなものを出したという感覚はありますか?
 
友香「ああ、そうですね」
 
藤田「今まで友香が作る曲って、すごい友香の感じが強くてバンドにはまらないところもあったんだけど。バンドでやっても、ホタバンになりきれないというか。なかなかやれなかったんだよね」
 
友香「私自身も、これまでは自分が作る曲はバントでやるのは違うかなと思っていたし、バンドでやりたくなかった気持ちもあったんです」
 
藤田「だから僕の感覚としては初めて友香が素でパーソナルなものを出して、バンドで音楽的にちゃんと解決することが出来た。それが今回の〈ロンリーレイニーデイ〉なんですよね。初めてホタバンの曲でもあり、ちゃんと友香の曲でもあるものが出来た」
 
――友香さん自身も今回の制作を通じて一歩前に進めた感覚があったんですか。
 
友香「ありましたね。今までは自分も曲が書けるけど、あんまりバンドで出してないという、悶々とした感じがあったんですけどね」
 
――今回はプロデューサーに褒められて?
 
友香「褒められて(笑)」
 
片寄「あはははは。無理に褒めてるわけじゃなく素直に良いと思ったので(笑)。でもこの曲は友香ちゃんの色をちゃんと出せたしバンドのアレンジも良いね」
 
――友香さんはいかがですか、この1〜2年のバンドの変化も含めて。
 
友香「私は結構あんまり何も考えてないことが多くて」
 
片寄「そのバランスがいいよね。藤田くんはすごい考えるタイプだから」
 
友香「そう、だから話を聞いてると噛み合わないことも多くて(笑)。あんまり考えずにみんなに付いて行ってる感じで、何か、気持ち的に前よりは……前はみんなの感じに付いて行けない時期とかもあったんですけど。今はそういうのもなく」
 
片寄「友香ちゃんが一番、色んな意味で垢抜けた感じもするし、この1年の変化が良かったんだろうなって。久々にレコーディングで再会して思いましたよ」
 
――メンバーじゃない第三者に音楽家としての自分を見てもらったことも大きかったんじゃないですか。
 
友香「それが嬉しかったから変わったのかなと思います」
 
 

「発信もするし受け取ることもしていきたい、そう思うとおのずと〈命〉とか〈未来〉とか、そういう言葉も歌詞の中に増えてきた気がします」(藤田)


 
151001_YK_00008――アルバム・タイトルの『hello messenger』という言葉にはどんな意味を込めていますか。
 
藤田「〈メッセンジャー〉というキーワードが僕の中にずっとあって。今までは一方的に自分の言葉を自分で発信して歌うのが音楽だって思ってたけど、そうじゃなくて、ツインボーカルで歌ってるっていうのもあるんですけど、自分に対して向けられた言葉も受け取るというか、そういう意味でも〈メッセンジャー〉というキーワードがあって。それが出来るバンドでもありたいなと思ったし、聴いてる人が思ってることを代弁するじゃないけど、そういうこともひとつ音楽で大事なことかなと思ったし。発信もするし受け取ることもしていきたい、そう思うとおのずと〈命〉とか〈未来〉とか、そういう言葉も歌詞の中に増えてきた気がしますね。今までよりもあったかい、人肌感のある言葉というか。今まではすごく肩肘張って歌詞を書いていた気がするけど、バンドが一番フィットする言葉の温度感がここにきてわかった気がします。今までそれを探してたんですけど、片寄さんと一緒に〈ホタバンってこうじゃないかな〉ってひとつひとつ考えていきながら自分の中でやっと整理がつきました」
 
――1年間の長いブランクを経て、また新しいホタバンが始まったことで今回のアルバムに繋がったと。
 
藤田「〈飛行船ミミ〉を片寄さんと一緒に作った時にすごくスカッとしたんですよ。そのスカッとした気持ちで今まで作ったものを見た時のモヤモヤがドーッときて(苦笑)。スカッとしたいんだけど、どうしても過去はあるし、その振り返るという作業も同時にやっちゃおうと。だから今はすごいクリアですね」
 
片寄「今回のアルバムはデビュー・アルバムっぽいよね。すごくフレッシュなものが作れたと思うし、それが僕としても狙いだったから。とにかく最近は一発のインパクトが求められる時期で、みんな変わったことをやって何とか目立たなきゃって躍起になってるような気もする時があるんだけど、そんな中で今こそ、こういう普遍的ないい曲を男女で歌うバンドっていう王道が逆に新鮮に響くと思ったんです。それをいい音で仕上げることで、風格みたいなものを作品に持たせてあげたかった。それが自分の狙いだったんでね」
 
――5年後、10年後にも残っていける曲たちですよね。
 
片寄「そうです、古くならない。それは自分が作るもの、関わるものには常に意識していることで。流行を取り入れて目新しいものを作るのは簡単なんですけど。それが古びない、何年も何年も聴いてもらえるものにすることが大切だと思う。今やCDではなくサブスクリプションの時代になったことで、ある意味、廃盤がないわけじゃないですか。逆に言えば長く聴いてもらえるチャンスかもしれない。そう考えた時にこれらの曲はいつの時代になっても魅力が色褪せない普遍性ある作品に仕上げたいと思っていました」
 
――ちなみに藤田くんはご自身もプロデューサーとしてのお仕事もされていますが。片寄プロデューサーの仕事っぷりをみてどう感じましたか。
 
藤田「自分がプロデュースの仕事を始めたのと同時期だったから、僕的にはそれもすごく嬉しくて。片寄さんのプロデュースを体験しながら自分でも別の現場でフィードバックすることができて。もちろん、そこで同じことをするなんてことは出来ないんですけど」
 
片寄「自分もそれは同じだよ。佐橋佳幸さん、長田進さんとかジョン・マッケンタイアとか、そういうプロデューサーとやってきて学んだことを、いま現場で自分なりにやってるだけでね」
 
――色んな血が受け継がれていくわけですね。
 
片寄「そうそうそう。それがやっぱりポップ・ミュージックの素晴らしいところで。歴史があるんだよね」
 
藤田「今回は片寄さんが音楽家として僕らと接してくれるだけでありがたかった。5人だけだったら、素面になっちゃうようなところもあるけど、そこに片寄さんが居てくれることでみんなずっとミュージシャンでいられる。レコーディング・スタジオに一緒にいてもそういう感覚がしていました。それは今までになかった、僕らが欲しかった感覚でした」
 
 
 
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【片寄明人氏に男女ボーカルものの名盤をセレクトしていただきました】


 
leon_maryLEON&MARY RUSSELL『Wedding Album』
 
古いものだと、これが好きなんですよ。レオン・ラッセルが奥さんとの結婚を記念して出したウェディング・アルバム。大抵、ウェディング・アルバムを出したミュージシャンはその後、離婚してしまうことが多いんだけど(笑)。この2人も離婚して、このアルバムも廃盤になってたんだけど最近CD化されて。ダミ声のレオン・ラッセルとソウルフルなメアリー・ラッセルの全く違う個性の声が、すごいいいんですよ。鍵盤主体で、今聴くと音色の感じも良くて、シンセサイザーの時代に移るちょっと前の時代の多彩なキーボードが味わえるし、マジカルなメロディがいっぱいあります。〈Rainbow In Your Eyes〉は特に名曲。
 


 
71cfWwpLr-L._SL1087_       Diana Ross and Marvin Gaye『DIANA&MARVIN』
 
ダイアナ・ロスとマーヴィン・ゲイのデュエット・アルバムは僕が子供の頃に初めて聴いた男女ボーカルの作品で、楽曲も素晴らしくて大好きだったんです。ほんとかどうかわからないけど(笑)、聞くところによると、彼らはそんなに仲良くなくてバラバラでレコーディングしてたから一緒にスタジオにいた日はほとんどなかったとか。でも、そうは思えないくらいお互いの個性も出てるし声が絡み合ってるんだよね。ほんとに凄いボーカリストが共演してるいいアルバムです。
 


 
idaIda『Will You Find Me』
 
Idaという、いわゆるアメリカン・インディー・シーンのバンドなんだけど。これはホタバンにも通じるところがあるかな、男女の声が混ざってIdaの声になってる感じが好き。決して派手ではなくて淡々としてるアルバムなんだけど、雨の日とかに部屋で流して聴いてるとすごくいいです。声のトーンとかも含め全体的にテンション低めなんだけど、心に訴えかけてくるものがあります。
 
 
 
 

 
 
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4th Album『hello my messenger』
1.hello hello
2.飛行船ミミ
3.ロンリーレイニーデイ
4.スターライトセレナーデ
5.花と未来
AMHL-0001 / ¥1,800(税込) / 2015.11.25 Release
JAN:4562143910876
Produced by 片寄明人(GREAT3)

 

ホタバン、2015ツアー決定しました‼

 

【ホタバンが咲く!〜hello your messenger TOUR 2015-2016〜】
11月14日(土)「ホタバンと荒ケン!〜胸キュンポップ頂上決戦名勝負2015〜」柏DOMe
11月19日(木)池下CLUB UPSET
11月20日(金)広島Cave-Be
11月22日(日)福岡Queblick
11月26日(木)渋谷Star lounge
12月9日(日)「ホタバンの東京ワンマン2015 〜We are messengers〜」渋谷La.mama

 

 
 
 
 
 
 
 


 
profile_fujita藤田竜史/フジタ・リュウジ●ホタルライトヒルズバンドのボーカル。
大阪出身柏育ちの1985boy。水瓶座O型。柏MUSIC SUN実行委員代表 / hotal light soundsプロデュース(赤色のグリッター/浮遊感チエ/polly)。
ホタルライトヒルズバンドHP http://hotaban.com
藤田竜史ソロHP http://edamamekumajiro.wix.com/ryujifujita