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NICO Touches the Walls、2年振りの全国ツアーである『TOUR 2015“まっすぐなツアー”』。5月21日豊洲PITで迎えたツアー初日を皮切りに、約2か月間に渡り全国各地を駆け巡ってきた。ツアー中の6月24日には、ツアータイトルにもなっている『まっすぐなうた』をリリース。そして、来る7月19日、初の東京国際フォーラムでツアーファイナルのステージに立った。
 
“今日は来てくれてありがとう”。ヴォーカル・ギター光村龍哉の第一声からスタートしたのが、「雨のブルース」。しんと静まりかえる会場にアコースティックギターの音色と光村の歌声が響き渡る。ギター、ベース、ドラムも加わり、ゆったりとしたアンサンブルが心地良い。しんとした空気を残したまま、ドラム対馬祥太郎がカウントを入れ、「TOKYO Dreamer」が始まった時、私はある事に気付き始める。1曲目、<幸せになろう/誰より幸せに><心奪ったあの雨の日から逃げられるまで>と、青いままの叫びを歌う「雨のブルース」は、2006年、彼らがインディーズ時代に発売した1stミニアルバム『Walls Is Beginning』に収録され、<孤高の戦いが/この街を生きていく術なんだ><孤高の戦いは/いずれこの夢を叶えるんだ>と東京を夢見る意志を歌う“TOKYO Dreamer”は、昨年2度目の日本武道館公演の翌日に発売された曲である。まるで、過去から現在に一気にタイムスリップするようなライヴの始まりは、彼らの現在地、つまり“今”を強く示していると思ったのだ。
 
そして、ここからNICO Touches the Wallsの“今”が大放出されていく。「ローハイド」から「ホログラム」「バイシクル」「N極とN極」の順で勢い良く放たれると、オーディエンスからは大歓声と拍手を呼び、ホールは熱気の渦に巻き込まれる。彼らにとってみれば、何十回、いや何百回と演奏してきた曲である。しかし、大きな産声を上げながら、この世界に産まれてきた赤ちゃんのように、キラキラとした新しい生命力に一曲一曲が満ち溢れていた。いつにも増して自由度の高い光村のヴォーカルが炸裂し、開放感溢れるサウンドは、バンドの高まるエモーションそのものだ。王道を極める流れの途中で突如広がる異風景「いいこになっちゃいけないの」では、光村が「どうもありがとっ」とオネエ言葉で曲を締め括りフロアを笑わせていたものの、間奏のギターソロでは、彼のギタリストとしての腕前が光り、申し分のないかっこ良さだった。
 
今回ツアーは、2014年2月5日に発売された初のベストアルバム『ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト』のアルバムツアーである。発売から1年5ヶ月後にようやく開催された全国ツアーと言うことで、「全国各地でお叱りを受けて参りました」と光村は話していたが、ベストアルバム発売後には、2度目の日本武道館リベンジを果たし、今年2月に発売された初のアコースティックアルバム『Howdy!! We are ACO Touches the Walls』の制作、そして初のビルボードライブのステージにも立った。何より、この期間が彼らにとって重要なターニングポイントなのである。過去に産みだしてきた曲を一度全てひっくり返し、総ざらいしたことで、自分達の曲が持つ素晴らしさに気付くことができたのだ。
 
2009年にリリースされた「かけら~総べての想いたちへ~」は、ノスタルジックな空気を漂わせる中、ソングライター光村龍哉の作るメロディと言葉の強さが、確かなものであることを証明し、続く「エトランジェ」では、坂倉心悟の鳴らすグル―ヴィーなベースの上で、古村大介のエレキギターが軽やかに舞い踊り、美しい音のループをホールいっぱい描き出した。蝋燭の炎がチカチカと灯るような照明の中、タメを効かせた重厚なビートを対馬が叩き、<愛する/君だけ/夢の中でも守りたい>とストレートな想いを光村が渾身の歌声で聴かせた「君だけ」。ステージ上の途切れぬ集中力は、オーディエンスを静寂へと連れ去るが、遮るように投下された「Diver」で再びフロアが揺れ始める。音のうねりに聴き手を巻き込み、誘導させていく4人の姿には、バンド結成11年目の貫録を感じさせるものがあった。
 
更に彼らはこの期間に、曲を進化さる楽しさを知ってしまったのだろう。余計なものが削ぎ落とされたソリッドなバンドサウンドで、男らしく生まれ変わった「Mr.ECHO」。群青と白いライトがまるで星空のようにホール一帯に広がる中を、流れるようなアコースティックギターと瑞々しい歌声を響かせた、大人の「夏の大三角形」。まるで音のバトルを観ているような、熱いステージを繰り広げた「ニワカ雨ニモ負ケズ」。原曲とは一味違う、ひらめきがたくさん詰まった新たな世界を、次から次へと畳み掛ける4人の姿は、子供のように無邪気だ。だから今の彼らを観ていると、ひたすら“楽しい”という気持ちが伝わってきて、自然と笑みがこぼれてしまうのだ。
 
しかし、今まで彼らが正しいと思っていた、歌い方や、演奏技術では通用しない事を思い知らしてしまったのが、アコースティックアルバムだ。その後、バンドをゼロに引き戻された状態で、新たに産まれた「まっすぐなうた」は、<間違ってた/なんか全部間違ってた>と、曲の冒頭から過去を全否定。それでも<だけど俺は笑っていたい/歌っていたい>んだと素直な気持ちを曝け出し、最後は<ふりだしに戻るのだ/君に光を射すために>と原点回帰し止めを刺す。東京国際フォーラムで聴いたこの曲は、彼らの熱意がまっすぐ伝わるサウンドで、胸に熱いものが込み上げてきた。その直後には新曲「渦と渦」がライヴ初披露。「まっすぐなうた」からの速いビート感を引き継いだまま、骨太いリズム隊を軸にフルスロットルで駆け抜けるが、耳にはしっかりサビのメロディが残る。今のNICO Touches the Wallsの魅力がぎゅっと凝縮された曲であり、彼らが新たなスタートラインに立ったことを確信付ける最大の切り札だ。そして、本編ラストの“天地ガエシ”。大音量で疾走するバンドに煽られ、拳を上げたオーディエンスが一斉に飛び跳ねると、フロアは更に熱を上げる。彼らが今日、ここまで走りきった祝福感でいっぱいの国際フォーラムを、メンバーとオーディエンスが一丸となり最後は無事引っくり返し、ライヴは一旦幕を下ろした。
 
アコースティック編成で行われたアンコールは、息の合ったドラムセッションを見事に決めた「手をたたけ」から始まり、アコースティックという概念を覆してしまう程のダイナミックな「THE BUNGY」で前のめりに食って掛かってきた。ここで一旦ブレイクを入れるように光村がアコースティックギターを爪弾きながら、ちょっと長めのMCが入った。まずは9月2日、記念すべきNICO Touches the Walls 100曲目となる18th single『渦と渦』をリリースし、続いて12月23日には、初の大阪城ホールでのワンマンライヴを開催。そして来年、2016年1月8日、3度目の日本武道館公演を開催することも発表する。“当たり前のように武道館をやる”と宣言した光村の言葉は、かつて2度目の日本武道館のリベンジを宣言した時よりも、自信に満ちたものだった。
 
アンコールのラストソングの「口笛吹いて、こんにちは」が始まると、終わりを名残惜しむのではなく、一瞬一瞬を噛みしめながら、この時間を楽しもうとするメンバーの姿がとても印象的だった。そして、メンバーとオーディエンスによる口笛がホール一体盛大に鳴り響き、温かな空気に包まれたままライヴは無事終わりを告げた。
 
NICO Touches the Wallsにとって『まっすぐなツアー』は20代最後のツアーだった。そして、彼らが20代の間に産みだした曲がたくさん詰まったベストアルバムのツアーを、発売から1年5ヶ月経って回ったことは、もちろん偶然なのだろう。しかし、バンドストーリーの中で更新され続けている曲の説得力と、メンバーから溢れていた音を鳴らせる喜びは、過去と向き合い続けた1年5ヶ月という時間の中で育まれたものである。また、彼らの過去が今の彼らの背中を大きく押したことで、「まっすぐなうた」や「渦と渦」といったバンドの新境地を切り開く曲も産まれた。だからこそ、今回のツアーファイナルは、30代を迎える彼らの新たな1ページ目を描くようなライヴになったのだと私は思う。例えば、ベストアルバム発売直後に同じツアーを開催しても、笑顔でファイナルを迎えることは、きっとできなかっただろう。決して器用なやり方ではない。それでも、彼らの大切な一歩一歩が、彼らにしか演じられないドラマを描く、感動的で素晴らしいツアーファイナルだったのだ。
 
 
 
 


 
1440216746398北島祐子●30代会社員。YUMECO RECORDSさんへの投稿は今回で2度目になりますが、外の世界に踏み出すことは、私にとって、とても勇気のいることでした。しかしNICO Touches the Wallsの活動を追い続けていくうちに「自分の可能性を信じることの大切さ」を学び、彼らの姿に背中を押され、投稿しようと決めました。音楽を聴いた時やライヴを観た時、心に沸き立つ感動を言葉にしたくて、文章を書き始め一年半。まだまだ勉強不足で落ち込むこともありますが、「好きこそ物の上手なれ」の精神で、これからも良い文章が書けるよう、邁進したいと思っています。