1ヶ月検診を無事に迎えました。 外出はドキドキ…

1ヶ月検診を無事に迎えました。
外出はドキドキ…


 
 
もうすぐ産後1ヶ月。なんとか授乳にも慣れてきて、だいぶ動けるようになってきたけれど、肩というか背中というか腰というか、身体の裏側が、とにかく痛い。
美容院に行きたいとかカフェに行きたいとかいろいろ思うけれど、今、切実にいちばん行きたい場所は、マッサージ屋さんかもしれない。
 
私はもともとマッサージされるのが人一倍好きな気がする。
男の人よりも女の人のほうが、マッサージに通う人は多いように思うけど、その中でも私のマッサージへの執着はふつうの女性の比じゃない気がする。
定期的にちゃんと通う余裕はないんだけれど…
1万円の臨時収入があったら、おいしいものを食べるよりも、服を買うよりも、マッサージに行きたいと思う。
マッサージをしてもらえると思うと、ちょっとくらいつらいことは頑張れるし、逆にちょっとしたストレスがたまると、マッサージ屋さんにふらっと入ってしまう。
 
そんな私の中でのマッサージの原風景みたいなものがどこにあるのか、はっきりした記憶がある。
 
小学校に入ったばかりのころ、中学生の女の子たちのキャンプについていったことがある。
ひとりだけ小学生の私は、テントの中でみんなよりも早く眠ってしまっていた。
夢うつつで薄目を開けると、私の足もとで何人かのお姉さんがおしゃべりしている。
その中のひとりが、私の足をずっともんでくれていたのだった。
みんなで楽しそうに夜ふかししながら、その女の子はやさしく私の足を指で押したりさすったりしていた。
ほの暗いテントの中、10代のガールズトーク、蚊取り線香の匂い、蒸し暑いのにどこか心地よくて眠りに誘われる、夏の夜風……
それが何のキャンプだったかとか、どこに行ったかとかはすっかり忘れてしまったけど、その夜のやさしい眠りの感覚と、ぼんやりと見た光景はずっと忘れない。
 
リフレクソロジーとかマッサージとかそういうものをまだ知らない歳頃だったけれど、そのとき私は、足をもんでもらうことの癒しを覚えてしまった。
それからというもの、祖母の家に泊まるたびに、祖母の足をもんであげて、私も自分が眠るまでもんでもらったりしていた。
暗い和室と、線香の匂いと、やさしく眠りに入っていく感じが、祖母との時間の大事な記憶でもあり、マッサージを受けるたびに思い出す感覚でもある。
 
そういう思い出があるからか、マッサージが異常に好きなのだった。
オリジナルのほうがいい……とか思ってしまっていたJ-POPのオルゴールアレンジも、マッサージ屋さんでよく流れているのを聞いているうちに、なんだか愛おしくなってきた。
マッサージには、原曲よりも、なぜかオルゴールアレンジのほうがしっくりくる。
この間も、BGMで流れている「らいおんハート」のオルゴールアレンジに耳をかたむけていると、涙が出そうになってしまった。
これが幸せっていうことなのかな、と思う。
 
 
YUMECO0701大石蘭イラスト
 
 


 
ranprofile大石蘭●1990年生まれ。東京大学教養学部卒、東京大学大学院修了。雑誌やWebなどで、同世代女子の思想を表現するイラストやエッセイを執筆。著書に、自身の東大受験を描いたコミックエッセイ『妄想娘、東大をめざす』(幻冬舎)、共著に『女子校育ちはなおらない』(KADOKAWAメディアファクトリー)。(photo=加藤アラタ)
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