今回から、連載させて戴くことになりましたが、音楽からカルチャー、雑記など軽やかに、読む方々の日々が持ち上がる、そんな彩りを込めたいとも思っています。国内のことはもちろん、色んな国、都市、場所、想いを跨いでいきたいのですが、第一回目は、私が日本とは全く違う形ながらも、ふと、この着想を得ました「街の灯」を感じた隣国の中国のことについて書きたいと思います。目に浮かぶかもしれません原色の灯、膨大な人、生活のうごめき、それに相応しいかな、という気持ちもあります。

私が初めて行ったのは2003年、短期留学という形での北京でした。

 

その頃の北京は、10年前と言いましても、整然よりは混沌、成長よりも牧歌、そして、生命力のうねりが目に見えてあり、もう今や随分と区画整備されました胡同(フートン)と呼ばれる路地や三里屯と呼ばれますバー・ストリートも趣きがあり、兎に角、自動車、バイクなどのスモッグで曇った空が印象的で(今はエコ推進もあり、随分と澄みました)、すぐに喉をやられたのを想い出します。北京は“大きな田舎”と呼ばれることがありますが、上海と比して、商業的特化されていない雰囲気も感じました。音楽といえば、路上で俗に言います海賊版、例えば、ノラ・ジョーンズからガンズ・アンド・ローゼズまでが10元ほど、つまり、150円前後で売っていながら、街のレコード・ショップでは舶来正装版として、輸入されたCDは相応に100元、1,500円ほどの値が付けられており、百貨店でもそうでした。

その安さと著作権を度外視した動向は今でも各国で俎上に上げられますが、現地で知り合った方と話していましても、当該国はライヴの規制などもありますし、その音楽を通して、異国を夢見る、そんな後景も感じ取れましたし、今も現前します。日本では、欧米諸国のアーティストのみならず、とても近しく色んなライヴは存在しますが、彼らはブラーやスウェードを通して、まだ見ぬ、もしかしたら、ずっと見られないかもしれないUKを想ったりしていた、そんな情景。当時に街で買いました音楽雑誌は90年代のムーヴメント、ブリットポップを特集するなど、時差と「これから」も感じました。ただし、既に北京電影学院辺りのアート・スクール系の方々、北京大学近くの電器街では、今にも繋がるような模索と試行を繰り返すアーティストも多くいました。RAGE AGAINST THE MACHINEのTシャツを着ていた子やROLLING STONESのバッジなどが行き交いながら、決して表層、イメージだけではない若い方々の息吹はあり、その後、仕事などを含め、北京を訪れるたびにそれは洗練とデカダンスを帯びてゆくようになるのですが、そういったことはいずれ、追々と。

 

さて、気になるかもしれません中華料理といえば、やはり、本場の中国という印象がありますが、例えば、ラーメンが一番、発達していますのは日本だと思います。現地でのラーメンは、ワンタンに近いものか、もっとざっくりとしたもので、ただ、少しずつ細部に拘った店も最近は各都市で増えてもいますが、やはり生活水準の価格的には張ります。ちなみに、スターバックス、マクドナルド、ケンタッキー、更に吉野家まで含んでもいいでしょうか、日本で俗に言われますファストフードはビッグマック・レートという言葉がある通り、世界で或る程度、価格固定がされていますから、「外食」の基準に当たり、そう敷居が低いものではなく、初めての北京でも現地の友達に「中華料理以外の外食を。」と頼みましたら、吉野家に連れて行かれそうになりました。今でも、スターバックスのコーヒー含め、それらは何らかの栄華・繁栄の象徴であり、日本食の寿司、すき焼きは勿論、近年、上海万博で食べましたうどんはヘルシーな健康食として高価で、逆に食堂みたいなところで、500円ほどで麻婆豆腐、炒飯、青椒肉絲などを食べた方が美味しかったりします。しかし、油が日本と違うのもありますから、食べすぎますと、大概、食中りをします。それも、一つ経験かもしれませんが。北京ダックなど日本でも高級食ですが、そんなに量を食べられないとおり、向こうは「残す」くらいの量が礼節でもあり、香辛料の味付けは地域によって特有で、ただ、日本人の舌に合う料理も当たり前に、多いように感じます。

 

10年ひと昔、そんな言葉はありますが、初めて訪れた北京の強烈な原色のネオンの街の灯は現在も変わらず、このコラム・タイトル、「街の灯」もチャップリンの映画から中村一義さんの曲まで何かとありますが、どんな場所にも街の灯に照らされた普通の人々の生活が下支えし、そこに音楽が鳴り、文化が寄り添う、そういう想いを込めています。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

 

まつうら・さとる●1979年生まれ、大阪府出身。好きな音楽と語義矛盾を感じ、音楽やそこに関わる文化や人が好きなのだと最近は考えてもいます。COOKIE SCENEなどをベースに多岐に渡る執筆活動を行ないつつ、基本、研究員、にして左岸派。ノンカフェインのお茶が好きです。近況として、東京にてこのサイトの主宰者たる上野さまに初めてお会いした印象は、絶対敵を作らない朗らかな鋭い知性とコーヒーとスイーツでライブに蓄える、流石のたたずまい、でした。