人間に生命力を与えるものとはなんだろうか?食べ物と睡眠と住むところはマストだ。しかし、それだけで人間は、「人生という道を輝きながら走ろう」とは思えない欲張りな生物なのだ。では、そう思えるためには何が必要なのか。それは、ときめきやわくわく、キラキラ、時には怒りだったりする。

そのときめきやわくわく、キラキラ、怒りをすべて含んでいる作品、いや作品というより生き物を私は発見した。まさしく運命の出会いだと思っている。SEBASTIAN XのNEWミニアルバム『ひなぎくと怪獣』だ。

SEBASTIAN Xは2008年に結成された、永原真夏(Vo)・飯田裕(B)・沖山良太(D)・工藤歩里(Key)の4人組バンドだ。

 

3rdミニアルバムは、収録曲の中でも1番キラキラしたサウンドの「サディスティック☆カシオペア」から始まる。スピード感溢れ、自分が星空の下に居るかのような錯覚を起こす曲だ。「ここから何かが始まる」というわくわく感が、自然と体を躍らせる。

〈心臓に突き刺さったそれが 真ん中に突き刺さったそれが まだ私を こうして動かすんだよ〉

〈爆発の最先端で わくわくしていたいんだよ 君の目に映るのは 輝く世界ですか?〉

これは、最高にモンスターが暴れまわっている3曲目の「GO BACK TO MONSTER」の歌詞である。この曲は「衝動」という言葉の解説にしてもいいのではないだろうか。駆け回るように動く鍵盤の音、サビのドラムは高鳴る心臓の音の様だ。とにかく気持ち良いくらい大げさで尖っている。

そして5曲目「未成年」は切ないメロディーと美しい鍵盤、ゆっくりと丁寧なベースライン、優しさと力強さの2面性を持つ歌声に気が付けば涙が流れている。この曲は今までの曲とは違い、心の奥を覗き見され、つねられた様な、恥ずかしさと切なさを感じる。花はいつか枯れて、その美しい姿を消してしまう。それは、絶対的なことで皆理解していることだ。しかし、いつまでも美しくいてほしいというエゴも同時に皆持っている。

〈少年よ 大人になんてなるな 思い出になんてなるな 何も知らない瞳で だからこその輝きで 大人になんてならないで 君が古くなってしまう 口移しで食べたチェリーのままでいて〉。変わることを理解しながらも、許したくないひなぎくのような可愛らしい幼さが、ちくちく心を刺激する。

最後はサウンドが10万電圧に光っているような「ひなぎく戦闘機」。この曲には「とにかく自由に夢をみて、笑顔で走り続けよう」という、すべての曲に共通するメッセージが込められている。そして、すべての音が自由に踊っている。開放的。この開放的な音のグルーウ゛と、子供のような猟奇的な可愛らしさが、SEBASTIAN Xのチャームポイントなのだ。

聴き手の身体全体をぐちゃぐちゃにしながら、最終的には丸裸にしてしまうようなアルバムだ。物凄くサディスティックでいて、物凄く愛が詰まっている。

この『ひなぎくと怪獣』のスペシャルサイトに掲載されているコメントで、永原さんはこう語っている。

「苛立って飼いならせない感情を例えば”怪獣”として。そしてその幼い衝動に”ひなぎく”と名付けて」と。

また、「今までは、自分の中の怪獣が、ちょっと恥ずかしいなと思っていました。かっこ悪いなーって。だって、わがままだし馬鹿だし自己中だし。でも、これからは仲良くしてみようと思います。まぁこれも何かの縁だしね。うまくやろうよ」とも。

確かにそのとおりだ。

何かしたくてうずうずしてたまらない。そんな面倒くさくてわがままな怪獣の様な感情がきっと誰の心にも存在する。しかし、そんな面倒くさい感情は時には大きな衝動となり自分を支えてくれることもある。その衝動こそが、人間の生命力に繋がる大切なものなのではないだろうか。だから排除してしまうにはもったいない、仲良くすべき友達なのだ。

そして、その怪獣と友達になる最善の方法は、『ひなぎくと怪獣』を聴くことだ。

 

 

 

ふじた・ゆうき●1993年11月17日生まれ。東京都在住。音楽が好きで特にロックを愛している、18歳大学生の女子です。音楽ライターを夢見ています。小学生の時にいつも家で流れていたスピッツが、音楽好きの第一歩です。今はとにかく、洋楽・邦楽などジャンル問わずに聴きまくっています。