①1集合1
 
 

2019年8月31日、東京・高円寺 HIGHにて、THE BOHEMIANS恒例である夏のワンマンライブ「SUPER SUMMER FIRE BOHEMIANS SHOW 2019」が開催された。


平田ぱんだ(Vo.)を除くメンバー4人がステージに現れると、観客たちが一斉にステージへと詰めかけ、ぎっしりと人で埋め尽くされていたはずのフロア後方に、瞬く間に隙間できた。そんな夏の暑さにも勝るとも劣らない観客たちの熱量を迎え撃つのは、星川ドントレットミーダウン(Ba.)のベースで始まる「ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも」だ。そして、ステージ下手から平田ぱんだが満を持して登場。オレンジ色のアロハシャツにサングラス、手には水鉄砲という完璧な夏仕様がまぶしい。ギラギラと照りつける太陽のようにエネルギッシュな、ビートりょう(Gt.)のギターが主役の「JUMPIN’ JOHNNY & THUNDER FLASH」や、千葉オライリー(と無法の世界)(Dr.)のドラムに合わせて手拍子がスタートした「Johnny Foo」など、夏にピッタリな勢いのあるロックンロールを立て続けに演奏していく。

 
 
②ぱんだ
 
 

一転「MONO」では、妖艶な魅了を披露。歌謡曲を彷彿とさせるメロディーを、平田ぱんだが品を作って歌い、ビートりょうと星川ドントレットミーダウンが中性的な歌声でセクシーなコーラスを重ねる。彼らの音楽に洋楽のロックンロールが多大な影響を与えているのは言うまでもない。しかし、さらにルーツを遡ったところには、90年代の邦楽や歌謡曲がある。こういった楽曲や、ポップなメロディーに関しては後者の影響が色濃いといえるだろう。海外と日本のロックの良いとこ取りをしたバンド、それがボヘミアンズなのだ。そして「sunday free irony man」を終えたところで、平田ぱんだがステージ上のある異変に気付く。メンバーの足元に、何やら白く光る丸いものが散らばっていたのだ。その正体は、ビートりょうのネックレスのパール。序盤から続く息もつかせぬ激しいプレイによって、一部がちぎれてしまったらしい。まるで砂浜に落ちた貝殻のようで、期せずしてステージをよりロマンチックに演出する結果となった。

 
 
③星川
 
 

9月からは暦の上では秋。つまりこのライブの終了とともに、2019年の夏が終わるのだ。セットリストも中盤に差し掛かり、そんなセンチメンタルが顔を覗かせる。「夏が終わっちゃうな、寂しいな」と平田ぱんだ。夏に捧げるアンセム「真夏の仲間」をゆったりと聴かせる。本間ドミノ(Key.)のキラキラと甘酸っぱい旋律と、哀愁を帯びたビートりょうのギターの応酬で魅せる「DRIVE LOVE」もドラマチックだ。今回も早い段階でソールドアウトとなったが、このライブの魅力はセットリストにある。8曲を終えた時点で演奏されたのは、初期の楽曲を中心とした、いわゆるレア曲ばかり。リリースに付随したライブでは味わえないお楽しみを目当てに集まるファンも多いというわけだ。「初めてワンマンに来たのにマニアックな曲ばっかりやってベスト盤しか聴いてないんだけど……って人がいるかもしれなくて不安になってたんですけど、大丈夫です。今からベスト盤の曲ばっかりやります!」と平田ぱんだ。この発言に端を発して、ついにボヘミアンズの真骨頂とも言えるライブ定番曲が解禁となった。

 
 
④本間
 
 

口火を切ったのは「THE ROBELETS」。フロントの3人が一斉にステージギリギリのところまで躍り出てフロアを焚き付けると、観客たちも手拍子や絶妙な合いの手で、メンバーたちの勢いに応えてみせる。ギターを持たないスタイルで、ステージ上を縦横無尽に動き回って歌うボーカルの平田ぱんだを筆頭に、個々が魅せることにもこだわったプレイで、華やかなパフォーマンスを実現するのがボヘミアンズの魅力。こういった様式美のあるライブは、ステージとフロアの交流が少なくなりがちだが、そこは生粋のロックンロールバンドだ、容赦なく観る者たちを熱狂の渦に巻き込んでいく。ポップなメロディーが爽快な「太陽ロールバンド」では平田ぱんだが「跳べ!」と叫ぶと観客たちが一斉にジャンプし、その衝撃が会場を揺らす。

 
 
⑤集合2
 
 

そしていよいよ、最終フェーズへ。「感動のクライマックスめがけてロックンロールするだけです」と宣誓し、エッジの効いたギターを軸としたソリッドなロックナンバー「male bee, on a sunny day. well well well well!」で切り込む。続くはUKロックさながらのハードボイルドな「I ride genius band story」だ。緊迫感漂うサウンドを押しのけるように「飛び込んじゃおうか!」と、平田ぱんだがおもむろにダイブ。フロアをサーフしながらも鬼気迫る熱唱で圧倒する。その健闘を称えるように観客たちの手で平田ぱんだがステージへと運ばれると、今度はビートりょうがダイブ。さらに「ダーティーリバティーベイビープリーズ 」では星川ドントレットミーダウンまでもがダイブし、瞬きさえも許さないかのような怒涛のパフォーマンスが繰り広げられる。

 
 
⑥千葉
 
 

観客との掛け合いやメンバー紹介を交えた「That Is Rock And Roll」を賑やかに演奏し、「どう見てもさっきより盛り上がってんじゃねえか!さてはお前らも俺らと同じ尻上がりなやつら……つまりスロースターターだな!」と「I am slow starter」へ。この後に演奏された「GIRLS(ボーイズ)」含め、彼らの楽曲には自分の生き方は自分の中にある信念に則って決めればいい、というメッセージが込められているものが多い。他人よりも遠回りしようが、周りと違う服装をしようが、好きなようにやればいいと背中を押してくれるのだ。それが何よりカッコイイことであるという証明が、彼らのステージなのである。流行よりもルーツを大切にした楽曲や、メンバーそれぞれの衣装など全てにおいて信念が見えるからこそ、ボヘミアンズはロックンロールヒーローとして絶大な信頼を得ているのだと思う。本編ラストは「最後の曲はロックンローラー、ビートりょう! あいつから始めよう!」と平田ぱんだにコールされ、ビートりょうが鮮やかにリフを掻き鳴らして始めた「bohemian boy」。

 
 
⑦りょう
 
 

興奮冷めやらぬままのフロアに巻き起こったアンコールに応え、再びメンバーがステージに登場。平田ぱんだとビートりょうが、顔を寄せ合いひとつのマイクで歌う〈信じてるのはロックンロールだけさ〉というフレーズが、バンドのスタンスを印象するような「ロックンロール」を含む4曲を演奏。「今年で一番今日が暑かったぜ! サンキュー!」と全員並んで挨拶も済ませ、アンコールも終了かと思いきや「もう1曲やるか!」と平田ぱんだから嬉しい提案が。沸き立つフロアを背に、ステージ上でしばしの密談が行われ、その結果ラストを飾ったのは「NEW LOVE」だった。

 
 
⑧ぱんだりょう

 
 
去り際「帰り方が分からないぜ!」と平田ぱんだは最後まで名残惜しさを露わにしていたが、それはきっと会場にいる誰もが抱いていた気持ちだろう。その思いを胸に、また来年の夏ワンマンを楽しみ待つのだ。しかし、秋も冬もボヘミアンズは止まらない。まず9月25日には平田ぱんだによる単行本『ロックンロールの話』の発売を記念したカバー曲のみを演奏するワンマンライブが開催される。そして10月からは新アルバム『the popman’s review』を引っ提げての全国ツアーが始まるのだ。ほんの少しの寂しさと、それを上回るお楽しみを残して、灼熱絢爛なロックンロールの夜祭は幕を閉じたのだった。

 
 
⑨集合
 
 
 
 
【セットリスト】


 

01:ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも
02:JUMPIN’ JOHNNY & THUNDER FLASH
03:Johnny Foo
04:MONO
05:sunday free irony man
06:真夏の仲間
07:DRIVE LOVE
08:憧れられたい
09:THE ROBELETS
10:シーナ・イズ・ア・シーナ
11:太陽ロールバンド
12:male bee, on a sunny day. well well well well!
13:I ride genius band story
14:ダーティーリバティーベイビープリーズ
15:That Is Rock And Roll
16:I am slow starter
17:君はギター
18:GIRLS (ボーイズ)
19:bohemian boy


EN
01:SUPER THUNDER ELEGANT SECRET BIG MACHINE
02:Brighter guy, Brighter girl
03:so happy go lucky !
04:ロックンロール
05:NEW LOVE

 
 
 
 
 
 


 
プロフィール用 イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。YUMECO RECORDSでは連載「やめられないなら愛してしまえ」を3年間執筆。引き続き、とっておきのロックンロールバンドを紹介していきたいと思います。よろしくどうぞ。