今年もまた大人になれず誕生日を迎えたイシハラです。
 
過去はついて回るし未来に頭を抱えてしまうけど、そんなものより今はどうした? と我に返る感覚が年々強くなっているように思います。身一つで勝負しようと思ったら、過去や未来のような仮想敵じゃなくて今目の前にある現実と戦うしかない。そう叩きこんでくれたのは、書くことを通して向き合った人たちです。皆々様、今後とも何卒よろしくお願い致します。
 
さて、前回はロックバンドが相次いでアコースティック活動をしている、というお話でした。今回はとある弾き語りライブの模様から、アコースティックでロックを鳴らすことの何たるかを語ってゆきたいと思います。
 
 
 
■「ロックンローラーよ、プラグを抜け ライブ篇~それでも尚、未来に媚びる × Outside dandy~」


 
去る8月30日、東京・新代田crossingにて開催された弾き語りイベント「FeelFree vol.21~バトルロワイヤルツアー後夜祭~」。この日は共にツアーを回った、それでも尚、未来に媚びるとOutside dandyという2組のロックバンドのヴォーカリスト・ギタリストが出演し、後夜祭という位置付けでツアーを締め括るものだった。
 
 
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photo by 大川 茉莉‏

 
 
まずは、それでも尚、未来に媚びるのがーこ(Vo)と、ろく(Gt)による弾き語りユニットのソレコビトが登場する。バンドセットでは、全身全霊の屈強なライブパフォーマンスとコブシの効いた力強い歌声のストロングスタイルでフロアを圧倒する彼ら。一見すると弾き語りやアコースティックとは対極あるようなバンドだ。
 
 

 
 
激動する感情と感傷を詰め込んだ荒々しくも切ないこの楽曲も、アコースティックで披露された。ロック然としたライブをする一方で、それ媚びの楽曲自体は歌謡曲や演歌など日本に脈々と流れる音楽たちが軸になっている。だからだろう、歌とアコースティックギター一本のシンプルな装いになっても、その説得力や凄味は一切失われない。それどころか、バンドセットよりも体温が直に伝わる感覚があるため、歌詞や歌の息遣いが如実に伝わってきて、より引き込まれる瞬間さえあった。
 
 
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photo by 大川 茉莉‏

 
 
弾き語りの面白さは、バンドが持つ本質を浮き彫りにさせることだと思う。演奏もパフォーマンスも極限まで削ぎ落として挑むステージだからこそ、芯が剥き出しになる。だからこそ幾度となくバンドで聴いた曲でさえ、新たな発見の連続なのだ。ちなみに私のそれ媚びの入り口は、偶然観たソレコビトのステージ。ライブハウスの扉を開けた途端飛び込んできた、鬼気迫る歌とギターに釘付けになった。弾き語りを観て気圧されたことのない方は、ぜひソレコビトのライブを。今までの概念が完全に覆るはず。
 
 
公式HP : http://sorekobi.com
 
 
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photo by 大川 茉莉‏

 
 
続いて登場したのはOutside dandyの村上達郎(Vo / Gt)と松本翔(Gt)。イベント当日に松本が「東京ダイバーズ」というユニット名を命名し、奇しくもこの日がお披露目公演となった。こちらも普段はネクタイを締めて、キザで硬派なロックを鳴らす生粋のライヴバンドだ。弾き語りにも関わらず、エレキギターを手に立って演奏する松本に会場はどよめきを見せたが、瞬く間に彼らの型破りなステージが観客たちを魅了してゆく。アコースティックギターを掻き鳴らし、ハスキーな声で歌う村上と、バンドセットさながらにエレキを弾き倒し熱烈なコーラスを添える松本。互いを相棒と呼び合うふたりの阿吽の呼吸で繰り出されるステージは、刺激的なものとなった。
 
 

 
 
また、この日は主催者のはからいで二部構成になっており、各組が交互に二度ずつ登場。その構成を上手く利用し、第一部はバラード中心、第二部はロックナンバー中心とステージの雰囲気を変えてきたのも見事だった。終盤にはTHE YELLOW MONKEYの「バラ色の日々」のカバーも披露。出演者のルーツになったミュージシャンのカバー曲などが楽しめるのも弾き語りやアコースティックライブの醍醐味と言えるだろう。
 
 
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photo by 大川 茉莉‏

 
 
公式HP : https://www.outside-dandy.com
 
 
そしてラストは、ソレコビト・東京ダイバーズがそろってステージに登場し、前回アコースティック盤をリリースするバンドとして紹介したフラワーカンパニーズの「深夜高速」をカバー。2組による最高にロックで自由な弾き語りの時間は幕を閉じたのだった。
 
バンドの本質が見えるからこそ、アコースティックや弾き語りは面白い。MVをご覧いただければ分かる通り、この2バンドもあからさまな似た者同士とはちょっと違う。だけど、こうして弾き語りのステージを目の当たりにすると、確かに彼らの根本には共通する要素があることが分かる。ロックの鳴らし方はひとつじゃない。演奏する側も聴く側も、ぜひ色んな表情のロックを楽しんで欲しいと思う夜だった。
 
 
▼セットリスト
 
ソレコビトbyそれでも尚、未来に媚びる
第一部
1.マイノーベンバー
2.暮れぐれも
3.巡恋歌 / 長渕剛
4.ノットデッド
5.まれびと
 
第二部
1.罪憐
2.この春を繋いで
3.モノクロノセカイ / Outside dandy
4.青い春
5.昨日のこと
 
東京ダイバーズby Outside dandy
第一部
1.ROLLING
2.愛のラビリンス
3.MUSIC
4.Any
5.東京
 
第二部
1.ミッドナイトタクシーレディオ
2.リボルバー69
3.バラ色の日々 / THE YELLOW MONEKY
4.東京Divers
5.さらば、ロックスター
 
en.深夜高速 / フラワーカンパニーズ
(by ソレコビトダイバーズ)
 
▼この二組に興味を持った方はぜひ、こちらの対談をチェックしてみてください!
それでも尚、未来に媚びる・がーこ×Outside dandy・村上達郎
「バトルロワイアル対談」
http://sorekobi.com/20180830
 
 
 
 
■monthly Rock ‘n’ Roll vol.4 ― THE BACK HORN「コワレモノ」


 

 
バンドはミズモノ? ナマモノ? いえいえ、コワレモノです。詳しくは上記の対談で……なのですが、それ媚びもdandyも共にツアーを巡る前に大きなアクシデントに見舞われたバンド。【大切なお知らせ】が定期的にSNSのタイムラインに流れて、その投稿が新曲のミュージックビデオよりも凄い勢いで拡散されてゆく。初めてそのバンド名を見たのが解散ツイートでした、なんてことも多々ある。やりきれない、なんて言う資格はないと思いつつも、やはり一抹の空しさがよぎる。メンバーの不仲とか、音楽性の違いとかが本当の理由ならまだいい。でも理由が生活や仕事などの外的要因ならば、本当にやりきれない。そんなことじゃあ全てのカルチャーが活動休止してしまうのに。
 
 
 
 
 
 


 
プロフィール用 イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。先月ここに書いた野島伸司脚本のドラマのことを発売中の『音楽と人』レビューページのコラムで語りました。ぜひチェックしていただけたら嬉しいです。『高嶺の花』、散々泣きました。