7月下旬から勤め先も夏休みに入りました。こう書くと、教職員も休みなのかと誤解する方がいますが、そんなことはなく、いつもと同じように出勤してます。部活はもちろん、夏期講習なんかも行われてます。

では、図書館は何をしているかというと、まずは蔵書点検です。一冊一冊、バーコードを読み取っていく地道な作業が続きます。だいたい2万冊くらいの蔵書があるので、一気にやろうとすると腱鞘炎になってしまいます。特に、大きな本、厚い本が密集しているエリア、例えば、辞書、事典、図鑑などがあるレファレンス・ブックスの棚や、写真集や図録などが多い美術の棚は要注意です。

図書館の本って、さまざまな人たちに貸し出されていろいろな思いがつまっているので、そのことを思うと胸が一杯になりますが、大きな本、厚い本の存在感に対する愛おしさは格別です。巨木信仰、巨石信仰ならぬ、「巨本」信仰とでもいえば良いのでしょうか。

場所もとるし、値段も高い。そんな巨本でも、わざわざ買って手元に置きたくなるものがあります。今回はそんな巨本の中からお気に入りの10冊をご紹介しようと思います。

 

The Most Beatiful Libraries of The World

 

2.6 x 29.7 x 29.5 cm

図書館に勤めるものとしては、これをあげなければならないでしょう。歴史のある図書館は、図書館というよりまるで美術館ですね。洋書なので説明を読むのに時間がかかりますが、パラパラとページをめくって眺めるだけで満足です。

 

名作椅子大全―イラストレーテッド

 

26.6 x 19.6 x 4.6 cm

小さい頃は建築家になりたかったんです。その夢の代償行為なんでしょうか。椅子が好きです。8,000脚をこえる椅子が収録されているこの本は、どこから読んでもワクワクします。
ほんとは普請道楽ができればいいんでしょうが、そんな甲斐性もないので好きな椅子を身近に置けたらいいなと思ってます。カラー写真が見たい場合には『1000チェア』もお薦めです。

 

情報の歴史

 

25.6 x 19.2 x 3.6 cm

世界史と日本史を対比させた歴史年表ってのは最近よく見かけますが、これはちょっと別格です。いまだとネットでやってしまうんでしょうか。そう思うと、1996年に増補版が出て以降改版されないのも納得ですが、なんとか復刊してくれないもんでしょうかね。

 

蒼海 副島種臣書

 

34 x 26.8 x 3.2 cm

「帰雲飛雨」という書がとにかく圧巻です。あんなにくるくるした「雨」は見たことないです。どんな字かといえば、Googleなどで画像検索してもらうと出てきます。判読できなくても見ているだけで心躍りますし、顔真卿、欧陽詢などのきれいな字とも違う不思議な書です。

 

世界人物逸話大事典

 

27.2 x 20.6 x 6.6 cm

題名通り、歴史上の人物のちょっとした話が載っていて、下手な小説よりも面白いです。人物像をいきいきと伝えてくれます。事典ですが、調べる事典というよりも読む事典でしょうね。

 

聖域伊勢神宮

 

36.6 x 26.2 x 2.2 cm

式年遷宮で注目を集めている伊勢神宮ですが、これは、前回(平成5年)の様子を収めた写真集です。霧のかかった明け方の河原など、写真からも神々しさを感じます。不思議なもんです。

 

書物の宇宙誌―澁澤龍彦蔵書目録

 

27.2 x 19.8 x 4.6 cm

澁澤龍彦の遺した1万冊を超える蔵書の目録です。蔵書目録なので、文章を読むのとは別の楽しさがあります。作家の本棚をのぞかせてもらってるような気持ちになりますよ。

 

神話の世界神楽

 

31.8 x 23.8 x 3.4 cm

中国地方は神楽がいろいろなところで息づいています。カラー写真が豊富なので、能や歌舞伎などの伝統芸能と対比しつつ、昔の人たちの暮らしに思いを馳せるのも一興です。『別冊太陽  お神楽』についてるCDをかけながら読むと臨場感倍増です。

 

国芳水滸伝・下絵図譜

 

36.8 x 26.2 x 1.8 cm

刺青の下絵なんでしょうかね。そう思うとちょっと身構えてしまいますが、幸いなことに色がついていないのでそんなことを考えずに見ることができます。歌舞伎の見得のような構図の見事さに圧倒されます。勇壮な『武者絵
下絵図譜』も合わせてどうぞ。

 

ウィリアム・モリスのテキスタイル

 

29.5 x 23 x 3 cm

上品で親しみやすいウィリアム・モリスのデザインを見ていると、心が落ち着いてきます。須賀敦子の『本に読まれて』や池澤夏樹の『スティルライフ』など、装丁にウィリアム・モリスを使っているものって不思議とアタリが多いです。

 

以上、趣味に走ったリストでしたがいかがだったでしょうか。

最近は、出版不況、電子書籍の普及など、紙の本には逆風ともいえる状況です。小学館が刊行中の「日本美術全集」は、「おそらく紙で出される最後の美術全集だろう」といわれているそうです。

私自身、電子書籍を随分購入してます。品切れもないし、配送時間を気にしないでもいいし、置き場所も困らないし、便利なところはたくさんあります。

でも、大きな紙に印刷された写真の圧倒的な存在感ってのも捨てがたいものがあります。司書というよりも一人の読者として、紙の本と電子書籍のもつそれぞれの長所が活きればと思います。

 

 

のま・つとむ●東京生まれ。米子在住。学校図書館に勤務。いまさらながら米子と東京が同じ北緯35度だということに気づきました。フェーン現象があったり、雪が積もったり、個人的には米子の方が過酷ではないかと思ってます。