6月といえば梅雨。入梅したそうですが米子も雨がほとんど降らず、早くも夏の気配。
歳時記をめくりながら、ああでもない、こうでもないと思っていると、父の日を発見して、あわてて贈り物を手配したところですが、今回は父親をテーマに少々綴ってみたいと思います。

 

恋愛を扱った物語はものすごく多いけれど、親子関係を扱ったものも同じくらい多いのではないでしょうか。
父親になったことがないので実感がなく、実際には息子から見た父親のことしかわからないのですが、10代の子たちの相手を日々していると、不思議と父親のような気分になってくるものです。
父親と不登校の息子が一緒に映画を見て感想を語り合った記録である『父と息子のフィルム・クラブ』で、父親が息子との距離の取り方に四苦八苦している様子がよくわかります。反発するにしろ、同化するにしろ、息子にとって父親は一番身近な男性像になり得るわけで、その微妙な雰囲気がつまってます。もちろん映画ガイドとしても楽しめます。

 

娘と父親というのも、息子とは違った意味で微妙なものなんでしょうね。『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘 』は、偉大なマンガ家である、水木しげる、赤塚不二夫、手塚治虫の娘たちによる鼎談なのですが、娘たちの情け容赦のない観察に恐怖すら覚えます。

例えば、この鼎談に出ている水木悦子ではないのですが、彼女の姉が水木しげるに対して「お父ちゃんの漫画には未来がない。手塚漫画には未来がある」って言葉をぶつけたそうなのです。他人はもちろんのこと、息子もなかなか言えないと思います。読みながら大笑いしつつも、もしも息子が言ったら横っ面張られるだろうなと思いました。
その他にも、父親の作品に出てくる女性キャラに自分たちが似ているのを指摘されて悩んだり、年齢を重ねるにつれて父親に対する気持ちが変化していく様子など興味深かったです。特に、故人である手塚治虫と赤塚不二夫の娘たちが語る父親への想いにはじーんときました。こんなことを娘に言われたら父親としてタマランでしょうね。

他にも鼎談ではないですが、水木悦子は『お父ちゃんのゲゲゲな毎日 』、赤塚りえ子は『バカボンのパパよりバカなパパ 赤塚不二夫とレレレな家族』、手塚るみ子は『オサムシに伝えて』という父親に関する著作があります。それぞれが家族の愛情に満ちているので、女性の方々は父の日を前にしたこの機会にぜひどうぞ。

あと、このあまりにも有名な父親たちは、水木しげるなら『ねぼけ人生 』や『完全版水木しげる伝、赤塚不二夫なら『これでいいのだ』、手塚治虫なら『ぼくのマンガ人生』などの自伝を出しています。父親たちの言い分もぜひ聞いてみてください。方向性こそ違えども、やっぱり偉大な方々です。

 

「スターウォーズ」って世界一有名な親子の物語といっても過言ではないと思うのですが、ルーカスフィルムが公認した不思議な絵本が出てます。『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』と『ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア』というヴェイダー卿の子育てを描いた絵本です。やんちゃなルークに手を焼くヴェイダー卿、アイスクリームを落として泣くルークに自分のをあげるヴェイダー卿、年頃のレイアの服装や行動にハラハラするヴェイダー卿など、暗黒卿もこの絵本の中では微笑ましい父親として描かれています。映画を見てなくても楽しめるはずですが、知っていると笑いつつもなんだかホロリとしてしまいます。

 

最後にこの絵本の帯からの引用ですが一言。すべての父子にフォースの導きがあらんことを!

 

 

 

 

のま・つとむ●東京生まれ。米子在住。学校図書館に勤務。5月中旬頃から通勤路周辺でも順々に田植えが始まりました。長い通勤時間の楽しみの一つです。標高や日当たりなどでその時期が違うのは頭ではわかっていたのですが、こういう手間ひまを目の当たりにすると米一粒の大切さを改めて感じます。