夏から秋へと夕暮れの匂いを変える赤坂。そこに静かながらも伝わってくるBBHFのツアー最終日を楽しみにしているファンのワクワクとソワソワが混ざる会場周辺の雰囲気が実に心地良い。2016年に活動終了したGalileo Galileiのボーカル尾崎雄貴さんらで結成され、北海道を拠点に活動しているバンド・BBHF(旧Bird Bear Hare and Fish)の1st EP『Mirror Mirror』リリースツアー最終日に潜入した。

 
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9月27日、東京・マイナビ赤坂BLITZ。ほぼ定刻通り開演。1st EP『Mirror Mirror』に収められた楽曲を中心に、ディズニー映画『ライオンキング』の挿入歌「Can You Feel The Love Tonight」を日本語訳したカバーまでの約90分間があっという間に過ぎていく、タイムトラベルのようなステージだった。


丁寧に、誠実に届けている印象のバンドの演奏とEDM要素を見事に絡み合わせたアレンジで曲の世界観へとオーディエンスを誘う。流行や今風だからという取ってつけたものではなく、しっかりと自分たちの音として昇華させている。ボーカル尾崎裕貴さんの歌声は、正確さと温かさのある沁み渡る歌声で紡がれる言葉は、果てしない大空と広い大地のその中で(©️松山千春さん)自然の雄大さを目の当たりにした感動のようで、音が塊になってうねる様はまさにバンドという生き物にだけ成し得ることが出来る魔法だ。

 
 
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終演後ステージ後方スクリーンに新曲「なにもしらない」のMVを映し出すニクい演出。The 1975やArctic Monkeysなどのサウンドプロデュースを手がけるマイク・クロッシーがミックスを担当したダイナミックで解放感ある音像。サビ頭の歌詞で〈僕らは何にも知らない〉という印象強い言葉が歌われている。情報に溢れ新しいそれを手に入れていく事が善とされ、時にはそれにうんざりする場面も多い。


きっと知ったようなつもりで私たちは自分の事でさえ分からないことだらけだし、世界のほんの一部しか知らない。でも知らないということが実は物凄い力を持っていて、そこに気付き新しい視点で世界を見るための始めの一歩を踏み出す勇気と喜びに満ち溢れた歌。これから知っていく全てがそれぞれの世界を形作るのだろう。

 


 

11月から始まるツアーは『Mirror Mirror』と、11月13日発売の2nd EP『Family』の両作の世界観を表現する内容になるという。先行配信されている『Family』収録の数曲の印象はデジタルな『Mirror Mirror』と対になるような、フィジカルでより伸びやかな特徴を持っているように感じる。更に自由度を増しながら、鏡に映る次の景色を見つめている彼らの演奏を是非生で体感して頂きたい。

http://birdbearhareandfish.com
 
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今回用プロフィール高橋 圭●1988年5月3日生まれ。2011年から作曲、ギターを務めるgood sleepsのALBUM『SIGNAL』はiTunes store、Apple MUSICにて配信中。Twitter:@zazamino
 
good sleeps
http://good-sleep.jimdo.com/
イラスト:matsun