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2019年7月12日、東京・川崎CLUB CITTA’にて、the pillowsの山中さわおが主宰するレーベル「DELICIOUS LABEL」によるライブイベントが開催された。7月3日にはレーベル設立20周年を祝したコンピレーションアルバム『Radiolaria』を発売し、所属アーティスト4組でのリリースツアーを敢行。本レポートではそのファイナル公演の模様をお届けする。


最初に登場したのはキーボードを擁した5人組ロックバンド・THE BOHEMIANS。真っ赤な衣装に身を包んだ平田ぱんだ(Vo.)がステージ中央に踊り出て「THE ROBELETS」で勢い良くオープニングを飾る。続く「太陽ロールバンド」は、ポップなメロディーと、ビートりょう(Gt.)のロックなギターのコントラストで魅せるバンドの王道サウンドだ。縦横無尽にステージを動き回るハイテンションなパフォーマンスで一気にフロアを熱狂の渦に巻き込んでいく。平田もMCで口にしていたが、UKロックや90年代の邦楽に影響を受けてきた彼らの音楽は、the pillows始めオルタナ勢が集うDELICIOUS LABELらしくはない。けれど、憧れる気持ちだけは誰にも負けたくないという気持ちが溢れたのが、ラストにthe pillows「No Substance」をカバーした瞬間だった。平田は高校生の頃、この曲を聴くために買ったコンピレーションアルバム『LIFE IS DELICIOUS』で、DELICIOUS LABELと出会ったのだという。それから18年。彼らはそのレーベルの一員になって、ステージに立っている。バンドストーリーとは憧れを追いかけて夢を掴むものなのだ、と身を以て証明した圧巻のステージだった。

 
 
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THE BOHEMIANS

 
 

高揚感溢れるTHE BOHEMIANSのステージから一転、歪んだギターが妖しくうなり、混沌としたムードを作り出したのはシュリスペイロフだ。サウンドだけを聴くと、まるで各々が別の曲を演奏しているかのように不安定な「行燈行列」では、どっしりと構えた宮本英一(Vo. / Gt.)の歌が重心として存在感を示す。独特の緊張感を張り巡らせたまま、2曲目の「檸檬」でもめまぐるしく変化する曲調で聴く者を翻弄する。しかしMCではDELICIOUS LABELへの所属を期に上京した際のエピソードなどを語り、一気に会場の空気を和ませた。そして『Radiolaria』に収録された新曲「クリストファー」では、序盤とは雰囲気がガラリと変わった素朴なメロディーに驚かされた。さらに宮本も柔らかな歌声で切なくも懐かしい物語を紡いでいく。彼らは決して感情を露にするタイプのバンドではないが、MCでthe pillowsが結成30周年を記念して制作した映画『王様になれ』の話題になると流石に言葉も熱っぽくなり、宮本は「大泣きした」と大絶賛。その熱を注ぎ込むように「ガール」を鋭利に鳴らし、最後まで多彩なアプローチでオルタナティヴの奥深さを見せつけていった。

 
 
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シュリスペイロフ

 
 

続いて登場したのはレーベルの紅一点、noodles。まずはikuno(Ba.)率いるエネルギッシュなリズムとyoko(Vo. / Gt.)の落ち着いた歌声が大地の生命力を感じさせる「She,her」をじっくりと聴かせる。レーベルの20周年は「私たちのアニバーサリーでもあります!」とyokoが話したとおり、DELICIOUS LABELは彼女たちの音楽に惚れ込んだ山中が、より良い音源を作ってほしいと設立したのが始まりだ。今回のコンピレーションアルバムには各バンドが1曲ずつ新曲を提供しているのだが、彼女たちはそこに20年分のファンへの感謝の気持ちを込めた。「みんなへ贈る曲にしました!受け取って!」と披露された「I’ll be a sensitive band tomorrow」。〈キミがそばにいると 無限を感じられるんだ 無敵になれるの 簡単に〉という素直なメッセージが、この日を満たす祝福ムードをよりロマンチックなものに変えてくれた。キュートとオルタナを融合させた「Ingrid said」も、彼女たちならではのグルーヴが冴える。編成の変化やメンバーの脱退を乗り越えても尚、自分たちの音楽を貫く彼女たち。そのストイックな姿勢が凛としてとても格好良かった。

 
 
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noodles

 
 

そしていよいよ、この日の真打・the pillowsが登場。定位置に着くや否や、山中がおもむろに「Ready Steady Go!」を歌い出す。ワンフレーズを歌い終えたところでフロアからは無数の拳が突き上がり、バンドサウンドで再スタートを切ると、その拳が一斉にステージへと突き出された。瞬く間に会場をひとつにしたところで間髪を入れずに「プロポーズ」へ。気分は上々のようで、山中は歌の合間あいまにフロアを煽る。そして「どのバンドも面白いだろう?……クセが強い!」と、出演した3バンドを賞賛。the pillows含め、所属バンドたちも皆、自らの音楽を信じながらも、それが思うように理解されず悔しい日々を送ったバンドばかりだろう。「今夜俺たちは孤独じゃない!仲良くしよう!」と始めた「バビロン 天使の詩」には、そんなレーベルの仲間たちに向けて、また会場に詰め掛けた多くのファンに向けてのメッセージに聴こえた。そして「ハイブリッド レインボウ」で力強く〈限界なんてこんなもんじゃない〉と歌う姿は、まだ見ぬ未来に広がる無限の可能性を私たちに約束してくれているようだった。

 
 
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the pillows

 
 

アンコールでは「Funny Bunny」と「No Surrender」を披露。私はこの2曲をレーベル代表としての山中から、所属する後輩たちへの贈り物ものように感じた。自分の信念を貫く強さと、上手く行かない日々を乗り越えるための力を手放さなければ、必ず未来は開けていく。そう強く訴えかけているように感じた。ただ、それが容易でないことは彼自身が一番良く知っている。だからこそ、命をかけて約束するのだ〈生き延びて又会おう〉と。

 
 
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the pillows

 
 
【セットリスト】


 

●THE BOHEMIANS
01:THE ROBELETS
02:太陽ロールバンド
03:GIRLS(ボーイズ)
04:おぉ!スザンナ
05:クリエイション&アクション
06:ダーティーリバティーベイビープリーズ
07:No Substance


●シュリスペイロフ
01:行燈行列
02:檸檬
03:クリストファー
04:ルール
05:なんで不安で
06:ガール


●noodles
01:She, her
02:EBONY
03:Ruby ground
04:Buggy loop
05:We Are noodles From Sentimental
06:Breakaway
07:I’ll be a sensitive band tomorrow
08:Ingrid said
09:965


●the pillows
01:Ready Steady Go!
02:プロポーズ
03:バビロン 天使の詩
04:ぼくは かけら
05:マシュマロ&ピーナッツ
06:パーフェクト アイディア
07:サード アイ
08:ハイブリッド レインボウ
09:Locomotion, more! more!
EN1:Funny Bunny
EN2:No Surrender

 
 
 
 
 
 


 
プロフィール用 イシハラマイ●会社員兼音楽ライター。「音小屋」卒。鹿野淳氏、柴那典氏に師事。守りたいのはロックンロールとロン毛。2016年11月号より『音楽と人』レビュー陣に加わる。連載「やめられないなら愛してしまえ」では3年間お世話になりました。今回からは新しい形でYUMECO RECORDSに記事を寄稿していきます! 今後ともよろしくお願い致します。