《枝折(しおり)とは、道しるべ、手引きという意味です。私の人生は、常に「本」が伴走してくれています。けっして、道に迷わぬよう。今回の連載より、自分の人生に影響を与えてくれた本の紹介と人生のエピソードをエッセイとして書いていきます。》
 
 
■渡辺ペコ『1122』(モーニング KC)


 
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 『 夫で
   家族で
   ズッ友で
   相棒で
   理解者で
   いちばん信頼しているひと
   なんでも話しあえるひと 』

 
今回、紹介する渡辺ペコ著『1122』よりの引用。妻が思う、夫とは何か。が一番表現できている描写だと感じた。
 
主人公は妻、相原一子。夫、相原二也。結婚7年目の仲良しだけど、セックスレスな子供なしの30代の夫婦。
二人が選択したのは、「婚外恋愛許可制(公認不倫)」。
夫には、妻公認の恋人・美月がいる。恋に浮かれる夫を見ていると、妻の心はざわめき、彼女の「凪」だった性欲に変化が起きる。
そして、このまま一生セックスがなかったら寂しいと思い、初めて風俗の扉を開く。
 
この作品に出会ったのは、私の夫が「これ絶対好きだから買っておいたよ!」と言って渡してくれた。まるで、私か! と思うような共感エピソードが満載で(性欲は出所後の岡村ちゃんで癒すとか! 発言小町にトピ立てるよ! とか)
セックレスとか、多少デリケートな作品を私に勧めてきた夫。私たち夫婦は、本当にどんなことでもオープンに話す。お互い本が大好きで、読んだら感想を話す。音楽も、映画も然り。常に「きっと、これ好きだろうな!」ってアンテナを張り巡らせて生活してる。相手にヒットした時は本当に嬉しい。
 
本書は、30代の女性ならみんなウンウンというワードばっかりで、とにかく一気に三巻まで読み進めてしまった。
夫の不倫相手である美月も同年代で、これまた「こういう人っているよねー」っていうタイプである。エリートの夫がいて、子供もいる。子供が、ADHDで育児に悩む。けれども、夫は育児は妻の仕事と任せっきりで相談にも乗ってくれない。息抜きのためのお花教室で出逢った男性と恋に落ちる(夫の二也)彼女の逢瀬は逃避にみえる、何もかも忘れる時間が欲しい。生活から離れて。
 
読者は、二人の女性の気持ちがわかるはずだ。だから、辛い。その二人のあいだを都合よく揺れ動くニ也に腹が立つ。このクズ野郎と思うことも沢山あるのだが、優しい夫、優しい恋人のフリをし続ける彼の精神バランスが崩れていく。妻の見慣れないレースの下着を畳んだ時から。
 
私が「結婚」というものについて小さい頃から考えていたことは、「うまくいくはずない」だった。祖父と祖母も仲が悪かったし、両親の離婚、離婚するまでの10年近い壮絶な闘いを見てきた。男と女の関係はなんて厄介なんだろう。恋というものはとっても素敵で楽しいけど、寝食を共にする「生活」になるとしんどいのではないか。働いてクタクタで帰ってきて、ご飯作って、洗濯して、想像しただけでムリだった。仕事でつけている仮面を外して、素になる場所に他人がいるなんてどこで疲れをとるんだろう。
 
けれど、2年前の夏、私は結婚をした。生まれ育った東京を捨て、淡路島へ移住した。正直、全てに疲れてしまっていて、まともな判断ではなかったかもしれない。とも思う時がある。家族が友人が一人もいない場所に行く。
恋に焦がれて、彼しかいない! と夢中になって決めるほど若くはない。
 
ただ、自分の「生活」を見直して、革命を起こしてみたかった。夫はとても優しく、真面目で、健康で、人の悪口を言わない。自分に足りない「ヘルシーさ」を与えてくれる人を選んだ。私たち夫婦は、『1122』の二人の様に仲良し夫婦と言われる。お互い友人も島外にしかいないから、ほとんどの話し相手とならざるをえない。夫は、厳しい指摘もしないから傷つかずに暮らしてきた。けれど、私たちも時間の経過につれ、小さな嘘をつくようになったりひずみを産んでいくのだろうか。何かしら、諦めたりすることができてくるのであろうか。いつまでも「男」であったり「女」であったりしないといけないのかなぁ。もう、だんだん二人共が中性的になってきてしまっては駄目なのだろうか。と、この作品を読んでいると思いが溢れてくる。
 
どんな夫婦でも生活と恋愛関係を両立することは難しいだろう。それでも、両立できる自分は…と淡い期待を誰しもしてしまうのではないか。
主人公の妻、一子は家庭内暴力をふるってきた父親、それを認めてきた母親をいまだ許せずにいる。だから、誰かに守られたい安心したいと思うのは仕方ないのではないか。男としての夫、性的な満足を共有する相手にしておくことは難しかったのではないか。
「結婚したらね、一番の味方ができるよ」と会社の先輩に言われたことを思い出した。確かにその通りな人に出会えた。幸せだ。けれど、私も一子のように、何か起きてくるのではないかと不安になる。でも、それでも私は自分の選択した道を歩んでいこうと思う。
 
 
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淡路島に来てから、海に行くようになりました。阿万海岸は、穏やかで美しい海です。

 
 
 
 


 
uemura上村祐子●1979年東京都品川区生まれ。元書店員。2016年、結婚を機に兵庫県淡路島に移住。